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2019-02-08 18:30

(連載1)大国中国の成熟と安定

加藤 隆則 汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
 民族感情の表現が成熟してきていることの背景として指摘できるのは、中国が名実ともに米国に伍すことのできる唯一の大国として成長した自信である。国内に深刻な難題を抱えながらも、GDPだけを比較すれば、中国はすでに日本の約3倍に達している。日本はもはや対抗や抵抗すべき羨望の先進国ではなく、すでに対等の、あるいは乗り越えた周辺国の一つに過ぎなくなった。たとえそれが幻想であっても、自信を生む心理的効果は十分だ。簡単に言えば、金持ち喧嘩せずの域に達したということになる。

 昨年12月18日は中国の改革・開放政策40年を記念する大会が人民大会堂で開かれた。ちょうど40年前の1978年12月18日、中国共産党第11期中央委員会第3回全会で、文化大革命の反省に立ち、閉鎖体制から開放体制への転換が決まった。習近平総書記は大会での演説で、改めて開放政策のさらなる拡大を堅持することを表明した。「閉じこもれば必ず落ちこぼれる」との苦い経験に裏付けられた国家の生き残り戦略である。内向き志向の際立つ日本はぜひ、他山の石とすべきである。

 さらに大会では、改革開放に対する官民の功労者として中国人100人のほか、外国人10人の名前が表彰された。外国人の中には、初期に工場を建設したパナソニックの創業者、松下幸之助氏と、鄧小平の改革開放を支援した大平正芳元総理大臣の日本人2人のほか、世界経済フォーラム(ダボス会議) のクラウス・シュワブ会長も含まれた。自画自賛だけにとどまらず、海外からの貢献も同じように認め、積極的に顕彰する姿勢も、大きな変化である。これもまた自信の表れとみることができる。侵略を受け半植民地となった弱小国から抜け出し、ようやく米国と主導権争いをするほどになった。世界を敵視するのではなく、積極的に世界のルール作りに関わっていこうとする意欲が生まれたことじは、改革開放40年の成果と言える。習近平は大会演説で改めて「人類運命共同体」を訴えたが、この用語はすでにネットの流行語にまでノミネートされるほどである。

 米中摩擦のさなか、南京事件記念日の前日にあたる12月12日、任剣涛中国人民大学政治学部教授の「報復心理によって形成された中国の独善的な世界観は徹底して抑制しなければならない」と題する一文がネットで流布した。被害者感情から他国を敵視するのではなく、理性的な世界観、平等な契約に基づく国際関係の感覚を身につけなければならないと呼びかけた内容だ。大国としての自信がなければ、タイミングとしても容易に世論には受け入れられない内容である。(つづく)

 
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