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2018-12-15 00:29

中国の資質を問いたファーウェイ問題

岡本 裕明  海外事業経営者
 数カ月前、あるところからファーウェイについての情報を求められたことがあります。私が何を知っているわけでもありませんが、そういう話が私ごときに振られること自体、おかしいわけで何かあるのだろうな、と思っていました。同社が今のような業容になるはるか前、同社の創業者が中国人民軍出身で実質的に中国政府との一体感があるかもしれないから要注意、と記された読み物を読んだ際、私はスパイ大作戦をイメージしました。いわゆる盗聴や情報が裏側を経由してダダ洩れになる80年代の映画に出てくるようなそんな感じでしょうか?10月、ブルームバーグは台湾出身者がアメリカで起業したスーパーマイクロ社の一部のマザーボードにチップが埋め込まれていて中国軍に情報が漏れている疑惑があると報じました。この「事件」はその後、アップル社などが否定し、他紙の後追いも出ず、それでスーッと終わりになりました。実態は分かりません。

 しかしながらアメリカ政府が米粒の大きさ程度のチップが埋め込まれることで情報が漏洩するリスクがあると認識するならば、中国のIT巨大企業製の部品が使われているIT機器は排除したいという気持ちがあるのは当然です。数年前、ドイツのメルケル首相の電話が盗聴されていた事件がありましたが、世の中、盗聴や情報漏洩がかなり行われている可能性は否定しません。我々がIT機器に取り囲まれた生活をしている限り、そして相手がその気があればあるほどプロは簡単に入り込めるでということでしょう。ではアメリカがなぜ、ここまで神経質になるのかですが、ファーウェイが大きくなりすぎるというよりずばり情報戦、諜報戦のネットワーク構築そのものにあると思います。ファーウェイ社は携帯通信インフラは世界1位、携帯の販売でも世界2位とすでに世界のリーディングカンパニーにのし上がっています。アメリカ政府がファーウェイの製品が搭載されているIT機器を使用するのはかつての米ソ冷戦時代にソ連のミサイルをアメリカの爆撃機に搭載するようなものでしょう。それはメンタルに絶対に許されない事態なのです。

 もう一つはビックデータだと思います。アメリカのIT企業が中国で活動を禁じられているのはビックデータを提供しないということであり、アメリカも当然、同じことを考えているとすればどうでしょうか?中国の経済が文化大革命明けでよたよた歩きの70年代後半、毛沢東のあとを継いだ鄧小平が改革開放政策を推し進めたあたりに中国の資質問題の理由がありそうです。自国内で技術をインキュベーションするには諸先進国とあまりにも格差が開いたため、技術導入を積極的に行う必要があった教育そのものが今でも影響していると考えています。つまり「自前でできなければ技術を学べ」ですが、この「学べ」はまじめに学ぶ場合とカンニングなどしてズルする場合があり、後者のやり方で「要領が良い」といわれ、急成長したり大金持ちになったりした背景があると考えています。日本企業も例えば77年に上海の宝山鋼鉄で新日鉄が手助けしましたが、これなどは中国スタイルの学びの典型で、そのあとあの有名な川崎重工の新幹線技術流出問題が発生しました。これがITがらみになるとアメリカ企業がその主役になるわけです。

 中国が1976年の文化大革命後、わずか42年で世界のトップに躍り出るほど急速に発展すること自体がおかしいといえばおかしいわけでアメリカの言い分は「お前ら、もう少し、抑えろ」と言わんとしているのでしょう。日本は戦後奇跡の復興と遂げたといわれますが、江戸時代から極めて高い教養と知識を武士のみならず、平民も学んでいたことが「奇跡の軌跡」であります。その点、中国や韓国は何もなかったことを鑑みればアメリカが「いい加減にせよ」と言いたいのもよくわかります。ファーウェイ社は厳しい制裁を受けるとみています。ただし、中国政府には本件は個別企業案件であって、貿易問題といっしょくたにしない大人の振る舞いをしてもらいたいと思います。(おわり)
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