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2018-12-12 11:12

(連載2)清華大学による巨額投資について

倉西 雅子  政治学者
 第2の中国側の利益とは、技術力の入手です。同記事に依りますと、東大と清華大学との協力は、投資関係に留まらず、日中スタートアップの共同研究や人材交流をも促すとされています。知的財産権の問題でアメリカから厳しい要求を突き付けられており、中国のシリコンバレーとも称された深セン等にて先端技術の自力開発に取り組みつつも、技術の調達先としてアメリカには最早期待できない状況にあります。昨今の習政権による急速な対日接近も、その背景として対米関係の悪化が指摘されていますが、日本国の技術開発力を合法的に利用すれば、自国の弱点をカバーできます。しかも、日本国の先端技術の開発現場でもある東大とビジネスを結ぶルートを押さえてしまえば、日本国の技術力をもコントロールすることができます(中国の脅威となる起業には支援しない…)。

 第3に挙げられる中国側の利益は、中国系巨大企業による日本国のスタートアップ企業の‘青田買い’です。中国では、現在、膨大な数の起業数を誇るものの、廃業もまた多く、かつ、極稀に成功した企業であっても、国営企業や巨大企業に買収され、姿を消しています。日中協力の枠組みにおいて清華大学から融資を受けた形で設立される東大関連のスタートアップ企業も、中国系企業にとりましては有望、かつ、株式入手の容易な買収物件となりましょう。

 以上に中国側の主要なメリットを述べてきましたが、これは、逆から見ればそのまま日本国側のデメリットとなります。‘起業支援’とは名ばかりで、その実態は、日本国から中国への先端技術の合法的な流出経路が設けられたのであり、日本国側としては、将来的に、中国経済に飲み込まれる可能性が高まったことを意味します。東京大学協創開発は、当初、民間企業との連携を構想していたようですが、今になりまして、何故、よりによりまして中国の国立大学と組むに至ったのでしょうか。

 しかも、相手国は、習近平独裁体制が敷かれている共産主義国家です。これは、日本国政府の意向を受けた決定なのでしょうか。報道によりますと、日本国の民間企業は、巨額の内部留保を貯めこんでいるそうですが、何故、その資金を自国の大学における起業支援に投資しないのでしょうか。日本国の東大生は、イノベーションに繋がるような画期的な技術の開発に真剣に取り組んでも、その成果が中国に流れるとなれば、研究意欲は著しく低下することでしょう。入管法や水道法の改正を含め、このままでは、かつて李鵬首脳が‘予言’したように日本国はやがて消えてしまうのではないかと不安になるのです。(おわり)
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