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2018-09-14 18:31

(連載1)共産党は憲法体制と矛盾しないか?

加藤 成一  元弁護士
 周知のとおり、日本共産党は「綱領」において「社会主義・共産主義社会の実現」を目的とすると規定している。すなわち、共産党は現行の2004年1月17日第23回党大会採択「綱領」の「五」において「社会主義・共産主義の社会をめざして」と題し、「日本の社会発展の次の段階では、資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる社会主義的変革が、課題となる。」と規定している。これは共産党の最重要な目的であり党是でもあると言えよう。そして、「綱領」の冒頭において、「日本共産党は科学的社会主義を理論的な基礎とする政党として創立された。」と宣言している。

 しかし、このような「共産主義の実現」を党是とし、「科学的社会主義」(マルクス・レーニン主義)を理論的基礎とする日本共産党の存在そのものが、自由と民主主義並びに議会制民主主義に基づき選挙による政権交代を基本原理とする日本国憲法体制と矛盾しないかについて、改めて検証されるべきであろう。なぜなら、日本共産党はマルクス・レーニン主義を「科学的社会主義」と称しているが、マルクス・レーニン主義の本質は「暴力革命」と「プロレタリアート独裁」による社会主義・共産主義の実現だからである。

 エンゲルスは「暴力は革命的な役割を演ずる、マルクスの言葉をもってすれば、新しい社会を孕む一切の古い社会の助産婦である。」(エンゲルス著『反デユーリング論1』)と述べ、マルクス・エンゲルスは「共産主義者はこれまでの一切の社会秩序の強力的な転覆によってのみその目的が達成されるのだと公然と宣言する。」(マルクス・エンゲルス著『共産党宣言』)と述べ、暴力革命の重要性を説いている。レーニンも「ブルジョア国家がプロレタリア国家と交代するのは通例暴力革命によってのみ可能である。」(レーニン著『国家と革命』)と述べ、暴力革命の不可避性を強調している。

 日本共産党はいわゆる「敵の出方論」を今も放棄していない。「敵の出方論」とは、共産党のいう「敵」すなわち反動勢力や反革命分子が社会主義革命に対して反抗や反革命を行った場合は、非平和的手段すなわち「暴力」で打倒するということである。1964年5月21日の第八回党大会の政治報告では「平和的か暴力的かは敵の出方による。現在の国家権力がたやすく権力を人民に譲渡するとは考えられない。」としている。宮本顕治元日本共産党議長は「革命への移行が平和的となるか非平和的となるかは、結局敵の出方によることは、マルクス・レーニン主義の重要な原則である。」(宮本顕治著『日本革命の展望』)と述べ、不破哲三前日本共産党議長も「わが党は革命への移行が最後的には敵の出方にかかるという立場をとっている。」(不破哲三著『人民的議会主義』)と述べているが、日本共産党は上記政治報告の通り、社会主義革命においては、「敵」の反抗や反革命を当然の前提としており、社会主義・共産主義を実現するためには、「敵の出方論」に基づく「暴力」の行使を排除せず、結局「暴力革命」を放棄していないのである。(つづく)
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