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2018-07-12 23:50

米ロ首脳会談の目的は対中協力要請か?

倉西 雅子  政治学者
 日本国の国会では“モリ・カケ問題”で審議の大半が費やされる中、国際情勢は刻一刻と流動性を増しています。各国首脳によるトップレベル会談の頻度もペースも上がっておりますが、この流れは、一体、何を意味するのでしょうか。そもそも、国際社会において何らの問題も懸案もなければ、時間や労力を要する首脳会談の場を設ける必要はないはずです。伝統的に外交儀礼を重んじるアジアとは違い、政治において実務を重んじるアメリカの大統領が、かくも頻繁に首脳外交を展開するのは、異例といえば異例の事態です。既存の政治を批判し、型破りな行動で支持を集めてきたトランプ大統領がアメリカの外交スタイルを根底から変えた、とする見方も可能ではありますが、それにしましても、同大統領の動きは何かに追われているかのようです。

 ビジネス界出身の現実主義者でもあるトランプ大統領が首脳会談に奔走しているとしますと、そこにはそうせざるを得ない理由があるはずです。そして、その動機を対中包囲網の形成と想定しますと、同大統領の堰を切ったような積極的な外交攻勢も説明が付かないわけではありません。一見、対北融和政策に見える米朝首脳会談での合意も、アメリカ陣営への北朝鮮の取り込みと見れば対中戦略の一環となり得ます。予定されているプーチン大統領との米ロ首脳会談も、公表されるか否かは別としても、来るべき米中対立を見据えたロシアへの対中協力要請を目的としているのかもしれません。中ロの軍事的な結束は、アメリカ陣営にとりましては最大の脅威となるからです。ユンケルEU委員長やイタリアのコンテ首相との会談も、‘陣営固め’として理解されます。

 折も折、訪中したマティス国防長官と会見した習近平国家主席は、国際的な批判を浴びている南シナ海問題について、「祖先が残した領土は一寸たりとも失うことはできない。他人のものは少しもいらない」と語ったと報じられています。2016年7月12日の常設仲裁裁判所の判決によって、南シナ海の諸島に対する中国の領有権主張の歴史的、並びに、法的根拠は既に否定されておりますので、“祖先が残した領土”など南シナ海には存在しておりません。また、“他人のものは少しもいらない”と語りつつ、中国が、南シナ海のみならず、チベットやウイグルなどを不法に併合するに留まらず、日本国の尖閣諸島を含む周辺諸国の領域に対して領有権を主張していることも紛れもない事実です。中国は、自己弁護すればするほどその言行不一致が際立ち、自らが‘信頼できない国’、否、‘信頼してはならない国’であることを証明してしまっているのです。

 中国が不誠実な侵略的国家である以上、今後とも、米中関係が好転するとは考え難く、周辺諸国のみならず、全世界規模での中国脅威論が高まることでしょう。仮に、トランプ大統領が、ロシアから対中協力を取り付けることに成功すれば、同大統領は、北朝鮮に対して軍事、並びに、経済的圧力を極限までかけようとしたように、中国に対しても、制裁レベルを一段と上げてゆくことが予測されます(もっとも、裏の裏があり、全ての諸国が国際組織のシナリオの下に操られている可能性もありますが…)。日本国内にも親中派の勢力が影響力を保持しておりますが、中国が‘信頼してはいけない国’であることは証明済みですので、日本国政府も、中国との対立激化を前提とした政策への転換を図るべき時期が来ているのではないかと思うのです。
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