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2018-06-13 22:33

中国の「一帯一路」問題は台湾に聞け

田村 秀男  ジャーナリスト
 先日、中国・習近平政権が推進する中華経済圏構想「一帯一路」討論会が台北で開かれた。台湾教授協会が主催し、台湾側から10人の政治・経済の識者が、日本からは筆者が参加した。台湾は中国の圧力によって国際社会から締め出される苦汁をなめさせられているが、台湾側は意気軒高、一帯一路構想の行き詰まりを見通している。「バスに乗り遅れるな」とばかり、一帯一路参加を安倍晋三政権に求める日本の政財学界・メディアとは対照的だ。

 一帯一路に関する台湾識者のコメントをいくつか紹介してみる。「圏域は、シルクロードというよりもユーラシア大陸を武力で制覇したモンゴル帝国の再現だ。中国共産党による覇権のたくらみで、平和攻勢どころか人を殺す。相手にしなくていい」(黄天麟国策顧問)。「中国が支配権を握ったギリシャの港は海賊版の輸出と脱税の巣窟になっている。中国主導の鉄道が中東、欧州に開通すればテロリストを運ぶし、腐敗し人間性の低い中国の独裁政治体制が沿線国・地域に輸出される」(張清渓台湾大学教授)。「インフラプロジェクトは、中国が資材、設備、技術者のすべてはもとより、中国人労働者を大量に現地に送り込み、相手国から雇用機会を奪う」(台湾団結連盟・前立法委員の頼振昌氏)。「中国は過剰生産能力を減らさずに海外に輸出する。高金利で相手国に貸し付け、返済できないとその国の土地や天然資源を奪う」(台湾シンクタンク委員の頼怡忠氏)。筆者のほうは、「中国主導の海外プロジェクトは対米貿易黒字によって稼いだドルを見せ金にしている。トランプ米大統領が中国に要求する2000億ドル(約21兆8000円)の対米貿易黒字削減を余儀なくされると、中国の国際収支は赤字になり、対外膨張政策は立ち行かなくなる」と論じ、トランプ政権と歩調を合わせるべきだと提言した。

 討論会の見方通り、当初こそ一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)に賛同したインド、英国、ドイツなどにも対中警戒論が広がっている。マレーシア首相に復帰したマハティール氏は、前政権が中国と契約した高速鉄道プロジェクトを全面的に見直すと表明した。借款を餌にしてパキスタンやスリランカの港湾を中国が占拠するやり方は米国など国際社会から非難されている。

 米国のティラーソン前国務長官は長官当時、「インフラ整備向け融資の仕組みも、些細(ささい)なことで債務不履行に陥るようにできている」と批判した。日本では麻生太郎財務相が中国の対外プロジェクト融資のやり方を「サラ金」商法だと揶揄したが、与野党の大多数は無関心で、安倍政権も親中派議員や学者、メディアの対中協調主義に引きずられがちだが、台湾を見るがいい。
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