国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-05-29 16:31

北方領土問題と日ロ関係

鈴木 馨佑  衆議院議員(自由民主党)
 先日、北方領土返還の行事に出席のため、北海道根室市の納沙布岬を訪れました。日本は地政学的に、北朝鮮、中国、ロシアという軍事大国に囲まれています。その中で現在、クリミアの併合について武力による現状変更を行ったとして日本や欧米からの制裁の対象となっているロシアですが、最近もイギリスにおける元スパイ毒殺未遂事件で更なる制裁を課されている状況です。実は、そのロシアが現在も不法占拠を続けている北方領土こそが、第二次世界大戦後、当時のソ連によって世界で最初に武力による現状変更が行われた場所です。不法な武力行使による現状変更が容認されるようなことがあれば、国際社会は不信と混乱の連鎖に陥り、相互不信は不要な軍拡競争を招き誰の得にもなりません。だからこそ国際社会はそのような行為を断固排除してきたわけです。まさにこのような法の支配への努力を完全に無視した行為の象徴として、日本は旧ソ連とそれに続くロシアの北方領土における不法な侵略行為と占拠の事実を国際社会に対して更に発信していく必要があります。

 国際法的には、第二次大戦後においても、北方領土だけではなく、武力などによらない歴史的経緯から日本に帰属していた占守島までの千島列島も、日本に帰属すべき領土でありました。その後1951年になって日本がサンフランシスコ平和条約によって千島列島(と南樺太)にかかる権限を放棄したために、現在では歴史上一度も他国に所属したことが無い北方領土のみが日本の一部であるというのが正しい解釈です。そもそも、日露戦争の結果として日本に帰属することとなった南樺太とは全く異なり、江戸時代から樺太千島交換条約に至るロシア帝国との各種条約の中で、武力に全く関係なく国際法的にも何ら問題なく日本の一部であったのが千島列島です。だからこそ、ポツダム宣言を受諾した日本が降伏し、第二次世界大戦が戦闘行為としては正式に終わった時点で、北方領土に加えて千島列島も日本の一部であったことが歴史の事実です。加えて、正確に理解が必要なのは、ソ連軍が降伏した無抵抗の日本に侵攻し千島列島と北方領土を不法占拠したのは第二次世界大戦が終わった後であったということです。

 つまり第二次世界大戦とも関係がない不法な武力侵攻の結果としての占拠であることは極めて重大な事実です。そして、日本は、千島列島こそサンフランシスコ平和条約において放棄していますが、北方領土の四島は、第二次大戦後のソ連の不法侵攻によるものを除き、歴史上他国が支配したことが一度もない固有の領土でありそもそも論争にもなりえないものだということも重要な事実です。まず、これらの認識を国内においても国際的にも改めて共有しておく必要があります。戦争における占領地ですらなく、戦争後の不法侵攻による不法占拠を既成事実化する試みについては、第二次世界大戦以降、国際社会が糾弾し続けている行為であり、そのようなロシア・ソ連の本質は最近のクリミア侵攻においても世界に広く知られるようになったところです。

 我が国としてもこと北方領土に関しては、ロシアへの協力をすすめることでロシアに配慮してもらうということではなく、筋は筋として、ロシアの歴史的な不法行為を世界に対して正確に伝え、国際世論の中で共通の理解を得られるように努めるべきなのではないでしょうか。この問題に関して、ある時点まで、中国共産党は北方領土が日本のものであるとの見解を明らかにしていたようです。このように中ロ関係は戦略的ファクターで動いてきたという現実を考えれば、日本がロシアに対して北方領土問題があるがゆえに国際的な潮流に反して接近しすぎることは、むしろ日本の長期的な国益の観点からも望ましくないのではないかと思われます。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会