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2018-02-07 11:23

稲嶺市長落選は最高裁判決の結果

加藤 成一  元弁護士
 2月4日の沖縄県名護市長選挙で、現職の稲嶺進市長が落選した。当選した新人の渡具知武豊新市長との票差は予想外の3458票の大差であった。稲嶺氏の敗因は辺野古移設反対一辺倒で、地域経済の停滞に対する市民の不満があったとされ、渡具知氏の勝因は中央政府との協力による地域経済発展へのビジョンを示し、市民の共感を得たことにある、と分析されている。この分析は間違っていないであろう。しかし、筆者は今回の市長選挙結果について、辺野古移設に関する2016年12月20日の最高裁第二小法廷判決を無視できないと考えている。

 同判決は、普天間に比べて辺野古は施設規模が縮小されること、移設すれば航空機が住宅地の上空を飛行するのを回避できること、環境保全に特段の不合理な点が窺えないことなどを理由として、辺野古海辺の埋め立てを承認した仲井真前知事の判断に違法性はないと判示している。要するに、辺野古移設は普天間の危険性除去と沖縄の基地負担軽減につながると最高裁が認めたのである。

 政府はこの最高裁判決に基づき、移設工事を進めている。すなわち、移設工事は合法なのであり、移設反対派が工事を止めるためには、上記最高裁判決を覆すか、実力行使による妨害しかない。後者が違法で許されないとすれば、前者しかない。しかし、確定した最高裁判決を覆すためには、日米間の新たな協定の締結など、根本的な事情の変更が必要である。近年の緊迫した北東アジア情勢を考えれば、その可能は極めて小さいであろう。

 今回の市長選挙結果を見ると、名護市民は最高裁判決に基づき合法的に行われている移設工事と、身近な地域経済の充実発展による市民生活の向上を比較衡量し、前者よりも後者をより重視し選択したと言えよう。これが今回の市長選挙で示された地元名護市民の「民意」である。常に沖縄の「民意」を強調し辺野古移設に反対してきた翁長雄志沖縄県知事が今回の選挙で示された地元市民の「民意」を無視することは自己矛盾であるだけでなく、法治国家である以上、移設工事の法的根拠となっている前記最高裁判決を無視することも許されないであろう。
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