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2017-11-03 10:59

(連載2)習近平政権の上海人脈にみられる政治闘争

加藤 隆則  汕頭大学長江新聞與伝播学院教授
 中国共産党には、腐敗の誘発を避けるため、地元出身者はトップの書記につけない不文律があるが、韓正は、これまでで唯一の例外である。2006年、当時の上海市党委書記で、生え抜きであった陳良宇が腐敗で摘発された苦い教訓があるにも関わらず、後に上海出身の韓正が上海市長から書記に昇進したのは驚きだった。2007年には、上海市長だった韓正を安徽省党委書記に起用し、その後任に胡錦濤総書記(当時)の子飼いだった共青団出身の袁純清・陝西省省長(当時)を抜擢する人事が内定していた。

 だが、上海市党委書記に就任して間もなかった兪正声・前全国政治協商会議主席は、上海の地元事情に疎い二人がトップを占めることを懸念し、これを白紙撤回させている。国有企業の強い上海市は、伝統的に官僚集団が強固で、外地出身の指導者にはコントロールが容易でないとの定評があった。

 これは、胡錦濤の権力基盤が弱く、上海人事を掌握できていなかった証である。袁純清は陝西省省長から山西省党委書記へと出世したが、習近平政権になって山西省幹部が軒並み腐敗で摘発され、本人も事実上、左遷された。同省の腐敗の元凶は、胡錦濤が秘書役として徴用しながら、政権転覆クーデターへの関与を問われ失脚した令計劃・元党中央弁公庁主任の一族によるものだ。現在、その党中央弁公庁主任に、習近平が上海から引き寄せた丁薛祥が就任することを思えば、政治闘争の明暗がくっきりと浮かび上がる。一寸先は闇だ。

 ともあれ、習近平は韓正に対し、コントロールが困難な上海市との連絡役を期待しているようである。習近平政権2期目は「二つの100年目標」を達成するため、引き続き経済改革に重点が置かれる。キーを握る重要都市は、トップが政治局員を兼ねる上海、広東の両地域だ。上海には、隣接する浙江・江蘇省で経験を積んできた李強が党委書記に就任し、広東省には、上海での経験もある甘粛出身の李希が党委書記として赴任することが決まった。甘粛・陝西エリア代表の李希の広東赴任をみると、陝・甘革命根拠地を築いた習近平の父親・習仲勲が、文化大革命後に広東のトップとなって改革開放の土台を築いた歴史が思い出される。(おわり)
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