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2017-10-13 10:04

韓国への技術流出を許す日本政府

倉西 雅子  政治学者
 アメリカでの原発事業で生じた巨額欠損に機に発生した東芝メモリの売却問題は、二転三転しながらも、ようやく日米韓連合への売却が凡そ決定したそうです。しかしながら、報じられる情報によりますと、この合意内容では、技術の海外流出を防ぐことはできないのではないかと思うのです。東芝メモリの売却問題については、同社の半導体が防衛や安全保障分野でも使用されており、かつ、日本国内に先端技術と雇用を残すべきとする判断から、日本国政府も深くかかわることとなりました。半導体とは“産業のコメ”と称されるように極めて裾野の広い製品分野であり、日本経済を根底から支える基盤でもあるからです。買収に名乗りを上げていた鴻海科技集団への売却の線が消えたのも、この理由に因ります。

 ところが、今般の日米韓連合への売却条件では、連合の一角を成す韓国SKハイニックスへの技術流出が起きることはほぼ確定的となります。何故ならば、SKハイニックスに対して設けられている議決権付株式に関する15%の取得制限、並びに、東芝メモリの機密へのアクセス制限は、僅か10年間に過ぎないからです。言い換えますと、10年後には、SKハイニックスは株式保有比率をさらに引き上げ上げ(ベインキャピタルが自らの持ち分を譲渡するとする説も…)、しかも、東芝メモリの“虎の子”とも言える産業機密を合法的に入手できるのです(各国・地域の競争当局による合併審査可で不許可となる能性も…)。

 東芝メモリに関するSKハイニックスの経営戦略とは、東芝メモリを技術ごと吸収し、規模の拡大でトップを走る韓国サムスン電子に対抗する共に、米半導体メーカー等を買収しつつ急速にシェアを広げている紫光集団といった中国勢との競争激化に備えることにあると推測されています。となりますと、今般の日米韓連合への売却とは、まさしくSKハイニックスの経営方針に沿った同社の利益のための決定であり、日本政府がこの売却を許したとしますと、一般の日本国民には背任行為と認識されることでしょう。資本参加はウェスタン・デジタルとの訴訟が解決した後とは言え、同連合の最大の出資者は、日本国の産業を支えるために国費を注ぎ込んで設立された日本国の産業革新機構であるからです。

 この売却が実現しますと、たとえ産業革新機構を含めた日本勢で株式の過半数を押さえたとしても、肝心の技術が海外に流出するのでは本も子もありません。近年の日本企業低迷の原因の大半は、海外企業による株式取得よりも技術流出にあり、東芝メモリこそ、過去にはSKハイニックスの産業スパイ行為によってシェアを奪われています。この売却劇が、日本側は資金だけを負担し、利益だけは韓国に流れる結末となるならば、税負担者でもあり、産業革新機構の真の“株主”である一般の日本国民は、納得しないのではないでしょうか。
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