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2017-09-29 21:37

「完全破壊」回避には北朝鮮の白旗しかない

倉西 雅子  政治学者
 先日、9月19日の国連総会におけるトランプ米大統領の初演説は、北朝鮮に対して“完全破壊”という極めて厳しい表現を使ったことで注目を浴びました。早々、北朝鮮の金正恩委員長は反発を露わにし、9月21日には批判声明を発表しています。この声明文におけるトランプ大統領批判の内容の大半は、そのままそっくり金委員長自身に当てはまるのですが、特に上記の“完全破壊”という言葉に強い反応を示し、「“完全破壊”という歴代のどの米大統領からも聞いたことのない、前代未聞の無知で粗暴ならっぱを吹いた。…反人倫的な意思を国連の舞台で公然と言ってのける米大統領の精神病的な狂態は、正常な人の物事の筋道と冷静さも失わせる。…」といった罵詈雑言を並べ立てています。しかしながら、金委員長は、この声明によって自らの墓穴を掘ったのではないでしょうか。

 歴史を振り返りますと、“完全破壊”と同様のフレーズを史上初めて使った米大統領はトランプ大統領ではなく、トルーマン大統領です。この言葉を耳にしたとき、真っ先に思い浮かんだのは、第二次世界大戦にあってアメリカ主導の連合国が日本国に対して降伏を勧告した、かのポツダム宣言です。同宣言の末文には、「右以外の日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす」とあります。

 北朝鮮に対する演説部分も、ポツダム宣言と同様に条件付きであり、「…アメリカ、並びに、同盟国の防衛のために致し方ない場合には、我々は、北朝鮮を完全に破壊する以外に選択肢はなくなるであろう」と述べているのです。金委員長は、恰も無条件でアメリカが北朝鮮の壊滅を企図しているかのように批判していますが、トランプ大統領の演説は事実上の降伏勧告であり、金委員長に対して速やかなる降伏か、否かの選択を迫っていると理解されるのです(北朝鮮は国際法違反を繰り返す犯罪国家なので、“降伏”の意味合いは犯罪者の投降に近い…)。

 となりますと、“完全破壊”が実行されるか否かは、北朝鮮の独裁者である金委員長の決断にかかっています。仮に、非難声明において糾弾したように、同委員長が“完全破壊”を本心から“反人倫的な意思”と認識しているならば、自らが白旗を上げて投降すれば、“完全破壊”は回避され、北朝鮮の国民は大参事に見舞われることなく救われます。今般の同委員長の声明は、あるいは降伏勧告の拒絶の意思表示かもしれませんが、北朝鮮に残された時間は僅かしかなく、仮に、降伏を拒めば、後世の歴史書には、北朝鮮の“完全破壊”の全責任は、数々の国際犯罪に手を染めつつ、自己保身のために誤った決断を行った同国の独裁者にあったと記されることとなりましょう。
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