国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-06-17 13:27

(連載1)トランプではなく膨張中国に翻弄されるG7首脳

田村 秀男  ジャーナリスト
 5月26、27両日にイタリア南部シチリア島で開催された先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の宣言は、発表後1週間もたたないうちに無力ぶりが露呈した。核・ミサイル開発計画の放棄要請に対する北朝鮮の返答は、新型ミサイルの発射。意義を再確認した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」はトランプ米大統領が離脱を表明し、ドイツのメルケル首相は今後、米国に頼らないと示唆する始末だ。G7サミットは存在意義を失ったのか。

 トランプ氏は北朝鮮から無視されたG7宣言よりも中国の習近平国家主席からの対北圧力の威力に頼る。5月29日の弾道ミサイル発射を受け、トランプ氏はツイッターに「北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、ずいぶんと隣国、中国に無礼を働くもんだ。だが、中国はしっかりやってるぜ」と投稿した。トランプ氏は大統領選当時の対中強硬路線を棚上げし、対中融和にいそしむ。4月上旬の米中首脳会談後は機会あるごとに習氏を「いい男だ」と褒めちぎる。

 中国に対して気を配るのは議長国イタリアなど欧州首脳も同じだ。サミット宣言では日本側の主張を酌んで「東シナ海および南シナ海の緊張を高めるあらゆる一方的な行動に対し強く反対する」とうたったが、緊張の元凶、中国への名指しを避けた。貿易問題については、日欧首脳がトランプ氏を説得して「保護主義と闘う」という従来の表現を残したが、たかがサミット官僚の作文、喜ぶのは早い。ダンピング、差別的非関税障壁、強制的な技術移転、知的財産権侵害、政府補助金、さらに鉄鋼の過剰生産能力など、宣言で言う「貿易歪曲(わいきょく)的慣行」のデパート、中国の名は一切なしだ。

 なぜ、そうなるのか。答えは2008年9月のリーマン・ショック後の世界経済構造の激変にある。グラフは各国、地域のドル建て名目国内総生産(GDP、年額)について、今年3月とリーマン時とを比べた増減額(3月末の1ドル=111・4円で換算)だ。中国のGDP増加は777兆円で米国の446兆円をはるかにしのぐ。日本は9・6兆円で、欧州連合(EU)は実に375兆円の減少である。中国のGDP統計の信憑(しんぴょう)性に問題があるとしても、この数値は国際的に認知され、各国政府や民間企業の判断基準になっている。リーマン後の世界の市場の拡大を支えてきたのは中国であると世界は認識しているのが現実だ。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会