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2017-06-02 06:20

本質は既得権益を擁護する官僚との戦い

杉浦 正章  政治評論家
 前文科事務次官前川喜平が漏らし、朝日新聞が煽り、「盲目民放」が興味本位に追随する、虚構の「加計学園疑惑」に対して、ようやく安倍政権は本格的な反論を展開し始めた。首相・安倍晋三自らが説明、閣僚や党幹部も積極的かつ具体的に反論し始めた。前川批判の焦点は何で次官在職中に身を賭して反対しなかったかに集中している。政治家ばかりではない事務次官OBらによる会合がこのほど開かれたが、「疑問があるならなぜ在職中に首相と会って反対しなかったのか。後でマスコミに向かって発言することは次官経験者がやることではない」との見解で完全に一致したという。心ある次官経験者らは、前川総スカンなのであろう。確かにまっとうな官僚なら筋を通すはずではないか。一部マスコミも次官在職中に売春を斡旋するようなバーに足繁く通い、「女性の貧困」を調査したと言ってはばからない「異次元の人」の発言を、まるで権力に立ち向かう英雄であるかのごとく報道し続けるのは、心ある国民の新聞離れと、民放蔑視(べっし)につながるばかりであることに気付くべきだ。

 まず安倍は1日、ニッポン放送の番組収録で「私の意向かどうかは確かめようと思えば確かめられる。次官なら大臣と一緒に私のところに来ればよい。そしてその場で反対すべきだった」と前川の姿勢を戒めた。そして「(加計学園の)理事長が友人だから私の国政に影響を与えたというのは、まさに印象操作だ」と厳しく断定した。自民党国対委員長竹下亘も「問題があるのなら、なぜ現職の時に発言しなかったのか」と批判した。筆者もこの問題の根底には、天下り問題で辞任を迫られた前川の“逆恨み”があると思えて仕方がない。そこにはマスコミの操縦を心得た前川の巧みな世論誘導術がある。文科省のメモの漏洩に始まって、一見新しい疑惑のように見える事柄を、毎日のように少しずつ漏らして、安倍内閣を政局に追い込もうとする。「次官の野望」が垣間見えるのだ。しかし、その発言の内容たるや「総理のご意向」メモに始まって、決定的な打撃力に欠ける話ばかりだ。

 「総理のご意向」が犯罪につながるような証拠は一切提示せずに、矛盾にあふれ、まるで「引かれ者の小唄」のような発言ばかりだ。前川は2016年9月に首相補佐官に呼ばれて「総理は自分の口からは言えないから」と獣医学部増設を求められたと主張する。しかし、学部新設は15年6月に閣議決定済みであり、閣議で決めた問題を「自分が言えない」として、首相が人を介して次官の了承を求めることなどあり得ない。さらに言えば加計学園獣医学部新設は民主党政権が推進した問題でもある。今治市は2007年以来、特区指定申請を15回も却下されたていたが、民主党が10年に「対応不可」から「実現に向けて検討」に格上げの閣議決定をしている。従って前川が「行政がゆがめられている」と主張し、民進党がこれに口裏を合わせているのは、天に唾するものだ。何をやっても「安倍の疑惑」と指摘するなら、当然民主党の疑惑も指摘され得る事態ではないのか。規制改革担当相の山本幸三が「(文科官僚が)既得権のことばかりを考えて行政をゆがめてきたのを正しただけだ」と反論しているのが正解だ。

 そもそもこの前川対官邸の確執の本質は、規制改革を推進する官邸と既得権にしがみつこうとする文科省、応援議員団、獣医団体などとの戦いなのだ。反対派は50年も続けられてきた獣医学部新設却下が、時代の変遷と共に実情に合致しなくなってきていることを無視しているのだ。鳥インフルエンザや口蹄疫などという新事態は、獣医学部の新設却下と明らかなる矛盾を示している。旧態依然として岩盤を守ろうとする文科官僚は、その新事態に気付いていなかっただけのことだ。その固い岩盤に安倍がダイナマイトを仕掛けなければ事は動かなかったのであって、政治は時に荒療治をしなければ、官僚の既得権擁護を突破出来ないのだ。もともと朝日などマスコミの多くは規制改革推進論であったはずだが、なんとしてでも政局に結びつけたいという“邪心” が先行して「報道をゆがめる」結果を招いているのだ
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