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2017-01-20 12:26

意外に適材適所な米国新長官の人選

川上 高司  拓殖大学教授
 1月20日の就任式を前にワシントンは多いに盛り上がっている。長官指名の公聴会は議員にとってもハレの舞台である。4年に一度、注目を集める公聴会は自己アピールする最善のステージとなっている。今回はトランプ指名の各候補はそもそも歓迎されない人々だけに公聴会でも議員は言いたい放題だったようだ。最も注目を浴び鮮やかな印象を残したのは上院外交委員会のマルコ・ルビーオだろう。自らも大統領選挙に出ているだけに知識と貫禄は豊富、見栄えのするスタイルと鋭い舌鋒はすでに次期大統領としてのアピールに十分だった。

 荒れたのは国務長官指名だけではなかった。他にも血祭りに上げられた候補がいる。住宅郊外開発庁長官(HUD)指名のベン・カールソンは大統領選挙にも出馬していたにもかかわらず、ルビーオと反対に追及されて追い詰められてしまった。上院融資委員会の言い分はこうだ。トランプ次期大統領やその一族の不動産事業と癒着するのではないか。「1ドルたりともあの一族に儲けさせることは本当にしないか?」と厳しい言葉で問いただされて、カールソンは「国民の利益あるのみ」と応戦するのが精一杯だった。

 指名時から批判の声が高かった、司法長官候補のジェフ・セッションズも司法委員会で厳しく問われた。反イスラム、移民排斥、女性差別、LGTB差別発言などが後を絶たず、とりわけ公正さと公平さを求められる司法の場に差別主義者はあり得ない、と敵意ありきの公聴会となった。「あなたはすべての国民に平等であることを保てるのか」と厳しく追及され、承認が難航する可能性も出てきた。一方でフレンドリーな公聴会となったのが国防長官指名の元海兵隊大将ジェームズ・マティス。軍事委員会のマケインも退役軍人であることから穏やかな雰囲気だった。退役軍人が国防長官に就任するには退役後7年間の空白が必要だが、マティスの場合はそれも問題となることなく承認もすでに得られている。

 返り討ちにあわせる強者もいた。CIA長官指名のマイク・ポンペオは退役陸軍情報将校だが、終始冷静冷徹で厳しい質問にも動じなかった。CIAが大統領からの介入を受けることはないかという質問に対しても「トランプの介入は受けない。CIAは独立を保ち政治的にはならない」と短くピシャリと答えて相手を封じた。情報将校らしく無駄口はたたかない。すべての公聴会が終わったわけではないがこうして見ると意外に適材適所の人選となっている。トランプ政権の運営が楽しみである。
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