国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-09-24 11:24

日本国は韓国に対して「債権」を保持するべき

倉西 雅子  政治学者
 先日、日韓財務相対話で協議開始が合意された日韓通貨スワップ協定については、日本国内では反対の声が強く、その仕組みにも疑問が投げかけられています。昨年終了した旧スワップ協定を刷新する内容とも伝わりますが、直近の情報によりますと、この協定、どうやら円・ウォンの交換ではなく、外貨準備として保有されている米ドルの相互融通のようなのです。円・ウォンの交換では、協定発動の場合、日本側には円調達に際してのリスクがある一方で、韓国側にも、通貨危機時に最大700億ドル分のウォンを調達する必要があり、日本経済以上に韓国経済が打撃を受ける可能性があります。しかも、仮に韓国が、輪転機でウォンを刷って調達すれば、日本国側は、円を提供する一方で減価したウォンだけが手元に残ることになり、このケースは最悪です。

 それでは、円・ウォン交換ではなく、ドルの相互融通とすれば、それは、どのような仕組みなのでしょうか。仮に、日本側が「虎の子」の外貨を韓国に対して700億ドル?を上限として供与し、その代わりに、ドル換算で供与額相当のウォンを受け取るとしますと、これもまた、日本側にとりましては著しく不利な協定となります。円調達の必要はなくなるため、日本経済へのショックは回避できますが、日本国の外貨準備高は減少しますし、国際通貨ではないウォンを受け取りましても、国際決済には広く使えません(日本国政府が、政府調達等に韓国製品を使うとしたら、日本企業にはマイナス…)。

 また、たとえ相互性を確保するために、協定において、日本国側が通貨危機に瀕した際に、韓国の外貨準備のドルと円を交換できるとする逆の条件を定めたとしても、日本側が通貨危機に直面する事態は低く、日本側の一方的損失となりかねないのです。仮に、日韓通貨スワップ協定の仕組みが日本側の一方的損失を招くのならば、締結は見送った方が賢明ということになります。

 もっとも、一方的損失を回避する手段があるとすれば、ウォンとの交換ではなく、日本国側の韓国に対する外貨貸与とするか、あるいは、ウォンとの交換であったとしても、韓国に対して、将来において当該ウォンと供与外貨との同額交換を義務付ける条件を付す…といった案は考えられます(700億ドルの供与であれば、700億ドルの返済を…)。日本国が、少なくとも韓国側に対して債権、あるいは、請求権を確保する内容でありませんと、日本国民の多くも納得しないのではないでしょうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会