国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-09-09 13:26

日韓スワップ要請の狙いは中韓一体化路線の墨守

田村 秀男  ジャーナリスト
 財務省は韓国企画財政部との間で、緊急時に通貨を相互融通する通貨スワップの再開に向けて協議に入る。韓国側は最近の国際金融市場の不確実性に備えるため、お互いに一致したと言っているが、通貨危機に脅えているのは韓国側であり、日本側は円資金を提供する一方通行になる。「スワップ」ではなく「支援」とでも呼ぶべきだろう。韓国側の狙いは何か。円という強い国際通貨で自身の外貨準備を補強し、ウォンを中国の人民元にぴったりと張り付かせる中韓一体化路線を墨守するためではないか。

 韓国の輸出は国内総生産(GDP)の約4割を占める。中国(香港を含む)向け輸出比率は3割強と貿易相手中最大で、日本向けの約5%を圧倒している。韓国はGDPの12%を対中輸出に依存するのだから、自国通貨を人民元に対して安定させるよう腐心する。日中韓の各通貨の対ドル相場水準を比較すると、一目瞭然、円は大きく変動しているのに対し、当局が相場を管理している人民元はなだらかに推移している。韓国のウォンは円と同じく、制度上は自由変動相場制なのだが、絶えず人民元にまとわりつく形で変動している。韓国当局は否定するが、市場介入によってウォン相場を操作した結果との疑惑が生じる。

 米財務省は対議会報告書で、ひんぱんに韓国の為替操作を非難し、ルー財務長官はこの6月初めには中央銀行である韓国銀行総裁に直接会って、是正を厳しく求めた。国際通貨基金(IMF)も韓国に対し「為替介入は市場が無秩序な局面に限定するべきだ」とクギを刺した。中韓とも政経不可分原則である。朴槿恵(パク・クネ)政権は政治・外交面でも北京の習近平政権にすり寄らざるをえない。昨年には米国の制止を振り切って中国共産党主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に率先して参加し、「戦勝国」代表でもないのに、朴大統領が天安門広場での「抗日戦勝式典」に列席するという具合だった。

 習政権は米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備決定に怒り狂い、韓国を威嚇する。対北朝鮮関係など選択肢が限られる以上、北京に平身低頭せざるをえない。減速する中国市場では韓国企業が中国企業との競争で押されっぱなしだ。それでも朴政権は対中依存をやめられない。国際金融市場では英国の欧州連合(EU)離脱騒ぎが小康状態になってはいるが、米国の利上げ機運再燃でドル不足が懸念されている。産業界も金融市場も外資への依存度が高い韓国は外貨が一挙に流出する恐れにいつも悩まされる。朴政権は日本との通貨スワップ再開に期待するのだが、せめてウォン相場操作をやめ、円並みに変動させるくらいの公正さを示すべきではないか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会