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2016-06-24 06:46

参院選、安倍自民圧勝の構図が濃厚に

杉浦 正章  政治評論家
 序盤の参院選情勢が6月24日各紙いっせいに出た。読売だけがびびったか慎重だが、朝日、日経、産経、毎日の4紙は「改憲勢力が3分の2議席をうかがう」で一致した。自民党単独過半数についても、4紙はその可能性を強く示唆した。昔の世論調査はあたらなかったが、最近はあたるから、よほどの不祥事や失政、政権首脳の大失言などが生じない限り、このままの流れになる可能性が高い。いずれにせよ自民党圧勝の構図が明らかになった。首相・安倍晋三が就任して以来国政選挙に3連勝。自民党総裁としては衆・参・衆・参と4連覇することになり、選挙の強さにおいて前代未聞の総裁となる。恐らく自民党内では次期衆院選を待たずに総裁の任期を6年から9年に延長、「オリンピックも安倍首相で」という動きが台頭する可能性がある。まず主見出しから見れば、各紙は一斉に改憲への可能性に見出しを取った。朝日が「改憲2/3うかがう」、毎日「改選勢力3分の2うかがう」、日経「自民が単独過半数に迫る・改憲勢力、3分の2うかがう」、産経「改憲勢力3分の2うかがう」でそろった。読売だけが「与党改選過半数の勢い」と、極めて当たり障りのない見出しを取った。読売は文中では「自民、公明、おおさか維新、こころの4党で改憲に必要な78議席をうかがう情勢となっている」としながら、見出しに取らなかった。

 次の焦点である自民が単独過半数につながる57議席に達するかどうかについては、朝日が「自民党は前回2013年の65議席には及ばないものの、選挙区で30議席後半、比例区では20議席近くの50議席後半となりそうだ」と57議席以上を強く示唆。日経は「自民党は改選50を上回り、非改選とあわせれば単独過半数となる57議席に迫る勢い」。毎日も「自民党の獲得議席は58以上になりそうで、非改選の65議席と合わせると27年ぶりの参院単独過半数となる勢いだ」。産経も「自民党は単独過半数に必要な57議席を獲得しそうだ」としている。ところが、読売だけは「自民党は1人区16の選挙区で優位に戦いを進めているのに加えて、比例区でも第1党の勢い。ただ非改選の65議席と合わせ、27年ぶりの単独過半数に回復に必要な57議席の獲得は微妙な情勢だ」と極めて慎重。この読売の慎重姿勢は思慮深いのか、洞察力に欠けるのか分からないが、全般的に言えば紙面に弾みがなく、読売センセーショナリズムが消えたようで、ちょっと寂しい。深い読みが背景にあってあたればたいしたものだが、あたらなければ、社内でも問題になるだろう。小生の記事を愛読している読売OBも場合によっては怒るべきだ。

 一方野党の選挙情勢については、共通して共産の改選3議席からの躍進ぶりの指摘が目立つ。朝日が「共産は選挙区で2議席程度、比例区でも6議席程度獲得する見込み。選挙区では前回の13年に続き、東京で議席獲得の可能性がある」。読売は「選挙区で3議席を獲得する可能性が出ている。比例区を含めると13年参院選の8議席を上回る勢い」とした。産経は「東京に加え、神奈川や千葉でも当選圏内につけている。比例代表も含めて2ケタをうかがう勢い」と一番多く読んでいる。日経は「改選3議席から大きく増やし、躍進した前回参院選の8を超える議席も視野」だ。共産党は勝てない1人区をほぼ捨てて、民進支持に回ったが、複数区などで着実に勢力を伸ばし、ケタは違うが自民と同様に躍進の気配だ。自共決戦の様相を見せている。

 一方、起死回生とばかりに共産党との統一候補を擁立した民進党は、改選45議席には遠く及ばない様相だ。民進びいきの朝日は共闘が「一定の効果を示している」としながらも、「民進は選挙区で19議席程度。比例区で11議席程度の計30議席ていどになりそう」と15議席減の可能性を予測。産経は「10議席以上減らす事ほぼ確実な情勢。改選4人区の神奈川や大阪でも議席を獲得できなくなる可能性がある」と分析している。日経は「前回の17議席は上回る見通し。それでも改選45には届かない公算が大きく、30議席程度になる可能性がある」とやはり15議席程度減を予測。読売はこれまた「非改選の17議席は上回るものの、改選議席45の維持は難しい」と数の明示には慎重。毎日も「全体では改選議席を大きく割り込む見通し」にとどまった。民進党代表・岡田克也の辞任は避けられまい。公明党は創価学会の支援で手堅く「選挙区で7人全員当選の可能性。比例区では前回と同じ7議席程度」(朝日)の線だろう。

 総じて世論調査の結果は50%前後という高い内閣支持率を色濃く反映したものとなっており、浮動層・無党派層が自民党支持に回っていることを示している。安倍が勝敗ラインとして、与党で改選過半数の61議席を掲げたが、この勢いが続けば、それを大きく越えて、自民党は単独過半数を手中にする可能性が濃厚である。その場合でも公明との連立解消はないだろう。自公は構造的に切っても切れない関係にあるからだ。何と言ってもアベノミクスの成功が大きく作用している。野党の「アベノミクスは失敗」と批判する作戦は、有効求人倍率の好転、大企業、中小企業の史上最高利益などの数字によって「成功」が立証され、説得力がないことを物語っている。 自民党は1989年の参議院選挙で、「山が動いた」と述べた土井たか子社会党に惨敗し、過半数を失った。それ以来、単独で過半数を握ったことはない。27年ぶりに念願の単独過半数を達成すれば、快挙と言わざるを得まい。たとえ改憲3分の2や単独過半数に達しなくても、圧勝の流れは変わるまい。党総務会長・二階俊博が5月に「最後まで支持する。総裁任期は延長するのが一番手っ取り早いが、今の党則だって変えてもいい。当然あり得る」と述べているが、安倍はまさに自民党中興の祖となりつつあり、今後任期延長論が動き出すものとみられる。
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