国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-06-03 10:32

ますます内向きにになるアメリカ

川上 高司  拓殖大学教授
 オバマ大統領が「世界の警察官から降りる」と宣言して、その言葉通り孤立主義を貫く外交政策を展開してきた。いよいよ任期が迫り、大統領選挙が盛り上がってきているが次期大統領がアメリカの立ち位置をどう考えているのかは気になるところだ。そのオバマの外交政策に近いのが、意外にも共和党候補のトランプである。彼はアメリカだけが負担を背負う必要はないとやはり世界の警察官を否定しているのである。

 世論も、世界には係わるべきではないと考えている。ピューリサーチセンターの5月の世論調査によれば、国民の57%が「アメリカはアメリカのことだけを考えていればよい」と答えている。「他国の問題に関与すべき」と考えているのは37%にすぎない。それは経済分野でもあてはまる。「アメリカが世界経済に関与しすぎだ」と答えたのは41%、「ほどほどでよい」と答えたのは28%、「関与が足りない」と答えたのは27%に過ぎない。「世界経済に関与することを支持する」としたのは44%、逆に「支持しない」と答えた国民は49%と、経済面でも国民は内向きになっている。

 そして次期大統領は「国内政治を最優先すべき」と考えている国民は70%、「外交に力を入れるべき」と考えている国民は17%にすぎない。アメリカ社会全体が内向きで孤立主義化しているのである。ここにトランプ人気がある。トランプは国民のこのような傾向を読み、アメリカ最優先の極端な政策を掲げて人気を博してきている。民主党でもサンダース旋風に象徴されるようにアメリカ国民は遠いシリアの問題よりも自分の生活する場所のことを考える政治を望んでいる。言い換えれば理想より現実優先なのである。

 かつてヨーロッパから新大陸へ移民を率いて渡ったウインスロップは、アメリカは「丘の上の街」であると説いた。丘の上にある街は誰もが見ることができる。衆人の目に常に晒されている街は人々の「理想の街」を目指さなければならない。つまり新大陸のアメリカは、世界の「理想の国」とならなければならない。それがアメリカに課せられた使命である。以来アメリカは世界の「理想の国」となる使命を背負ってきた。だが、世界は大きく変わった。アメリカも変わった。もはやアメリカが「丘の上の街」である必要はない、普通の人々でいいのだとアメリカ国民は考え始めている。今年の大統領選挙は、アメリカの理想をこの先も背負うのか放棄して普通の国になるのかを問う重大なターニングポイントとなる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会