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2016-05-25 06:52

自民は「舛添降ろし」の先頭に立て

杉浦 正章  政治評論家
 室町中期の「史記」の注釈書・史記桃源抄が「人といふものも居住まいによる事ぞ」と、人間のあるべき姿を説いている。背筋のビシッと通った姿勢が重要だというのだ。自民党幹事長・谷垣禎一が“舛添不祥事”に関して「首都のトップに立つものとして、それなりの居住まいがなければならない」と述べているのは至言だ。自民党本部は夏の国政選挙に向けての危機感もあり、「舛添は既に死に体」(党幹部)と、早期辞任を求める空気が強い。しかし、本人はまだ「サギをカラスと言いくるめる」のが通用すると思っており、自民党都連も様子見で、党本部との温度差が目立つ。しかし舛添要一は絶対に外れないトラバサミにかかったのであり、ここは都連会長・石原伸晃がその影響力を行使して、早期辞任に結びつけるべき時だ。そうしなければ自民党は「製造物責任を問われる」(幹部)事態に発展しかねない。舛添要一の2回にわたる記者会見をつぶさに観察したが、舛添は自らの置かれた立場を依然予測できていない。この「悪あがき」のままではほぼ確実に「野垂れ死に」するという構図の理解に到っていないのだ。

 核心部分は2度にわたる正月の家族旅行のツケを政治資金に回しておきながら、「当日は事務所関係者との打ち合わせがあった」と述べた点だろう。記者団から鋭い質問が出された。「奥さんは事務所関係者に含まれるか」という問いだ。図星を突かれたと見えて、うろたえた舛添は「妻は家族です」と意味不明の言葉を2度にわたって繰り返し、「第三者の専門家による調査に委ねる」と述べるばかりであった。この「第三者の専門家」を何と舛添は46回も繰り返したが、誰が舛添の“お手盛り”人事を信用するかだ。何も家族の旅行などは手帳を見れば済む話であり、専門家が判断する問題ではない。その弁明態度は児戯に等しく、説得力はゼロだ。舛添の政治資金流用はもはや“病的”なまでに拡大している。インターネットオークションでの美術品あさりや、車2台を購入して1台は政治活動に関係のない湯河原の別邸に置いている。次から次に暴かれ続ける構図は、舛添が知事でいる限り続くのである。

 これが意味するものは、自ら辞任しない以上、最終的にはリコールが成立することだ。朝日の世論調査によると舛添の対応が「適切ではない」は83%に達し、「適切だ」は8%だった。自民支持層の84%、公明支持層の8割も「適切ではない」と答えた。これほど都民が怒りの声をあらわにしているケースは珍しい。誰もが簡単に見破れる嘘をつきとおせると思っている知事への不信が募る一方なのだ。首相・安倍晋三が「公私混同に厳しい批判がなされている以上、政治家は信なくば立たず」と発言している通りである。最終的にはリコールが成立することを前提に、自民党都連は動くべきであろう。つまりリコールによって都民の手を煩わせることなく、自らの自浄作用を発揮すべきである。

 自公両党の都議会議員に舛添を担いだ事へのやましさがあるように見えるが、舛添の本質を見抜けなかったことは確かに問題がある。小泉進次郞だけは見抜いており、「応援する大義がない」と執行部を批判したが、まさに図星であった。しかし、舛添の政治資金流用の“習癖”は、週刊誌の調査報道によって判明したことであり、候補を擁立する前に検察並みのチェックを入れることは不可能である。したがって、都議会の自公両党はここで躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。堂々と批判の論陣を張れば良いのだ。今後都議会が取るべき手段としては、方法が三つある。一つは追及のための百条委員会を発足させることである。虚偽の陳述には厳しい罰則が伴う委員会であり、それでもごねれば都議会が不信任決議を上程すれば良い。3分の2の議員が出席して4分の3の同意があれば、舛添は辞任か、都議会解散しかなくなる。そして最後の手段がリコールとなるが、133万人の証明を集めて、過半数の賛成があれば成立する。

 都議会は6月1日に召集されるが、本会議での代表質問の段階は突っ込んだやりとりが難しい。9日からの総務委員会が焦点となりそうだ。医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った前任者の猪瀬直樹も、総務委員会での質疑で追い込まれて、最終的に辞任を決断するに到った。都議会与党は、ここは腹を据えて舛添辞任へと追い込むべきである。評論家の中には「今辞任に追い込むと、4年後のオリンピックと選挙がぶつかるので難しい」などと悟ったような発言をする向きがいるが、馬鹿げている。例えぶつかっても選挙は出来る。今度こそ良い都知事を選んで、継続させれば、問題はない。参院選とのダブルになろうと、衆参同日選とのトリプルになろうと、早期辞任が良いと思う。それも自民党が率先して辞任を実現させれば、選挙民の理解は得られるが、躊躇すれば国政選挙に影響が出る。
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