国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-03-23 14:40

米ロの外交手腕が問われるシリア和平プロセス

川上 高司  拓殖大学教授
 ロシアのプーチン大統領は、ロシア軍をシリアから一部撤退させると発表し国際社会を困惑させた。ロシアによるシリアへの軍事介入は唐突に始まりそして唐突に手を引くというプーチン外交に、国際社会は文字通り振り回されており、ロシアがパワーゲームの主役であることを改めて思い知らされた。

 撤退は3月15日から開始する予定だった。14日にはプーチン大統領はアサド大統領と電話で話し込んだという。そこでは、アサド大統領に対し平和会議主導の和平プロセスを受け入れるように説得したという。またオバマ大統領とも電話で会談したという。ただイランやヒズボラは知らされておらず、この唐突な撤退のニュースに驚きを隠せない。このロシアの撤退で最も影響を受けるのは、アサド自身である。アサドはロシアの強力な後ろ盾を失うことになり、政治プロセスにおいて譲歩をしていかなくてはならない立場に追い詰められる。そのため和平プロセスは進展する可能性は高い。もっとも、ロシアの軍事基地はそのまま残るのでいつでも戻ってくることもできる。

 この唐突な撤退には、当然ながらアメリカや湾岸諸国との取引があったことは間違いない。ロシアは原油価格の下落で財政が逼迫している。外国へ派兵するコストは高く今のロシアでは派兵を維持できないので、「名誉ある撤退」を演出した可能性もある。プーチンが最も恐れていたのはアフガニスタン侵攻の二の舞になることであり、撤退時期を慎重に見計らっていたが、今が撤退の好機と判断したのかもしれない。

 アメリカにも譲れない事情がある。ケリー長官の任期終了が迫りアメリカ大統領選挙が盛り上がる中、次期大統領がだれになるかでシリア情勢が大きく左右されることは間違いない。共和党の超保守派のテッド・クルーズが大統領となれば、かつてのブッシュ政権のようにネオコンが復活し中東に関与を深める可能性は高い。そうなればシリアの安定は遠のき、軍事介入もあり得る。3月24日で現在進行しているシリア和平会議はいったん終了する。今後はシリアの政治的プロセスの構築に着手することになる。限られた時間でどこまでできるのか。米ロという2大大国の外交手腕が問われる。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会