国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-02-25 10:08

特例公債法のあり方について

鈴木 馨祐  衆議院議員(自由民主党)
 衆議院での予算審議もすでに総審議時間もそれなりになり、先日の地方公聴会、今週水曜日の中央公聴会と、後半戦を進んでいる状況です。そんな中、来年度の税制や軽減税率、特例公債法の審議が財務金融委員会でスタートしました。この特例公債法とは、簡単に言うと、政府のお金の使い道を議論する予算の裏付け、それも最近では財政赤字の状態が続いていますから、税金の収入では足りない部分を補う国債の発行を定めるものです。いわば予算とは一体の歳入法案の一部がこの特例公債法です。しかし実はここに問題があって、これまでの日本における多くの国会の混乱のもとともなってきたのがこの特例公債法でもあります。

 というのは、歳出を定める予算については憲法で衆議院の優越が定められていますが、歳入を定める税法や特例公債法にはその定めがなく、衆議院参議院両院での可決が原則として必要となっているため、ねじれ国会においては、国会の審議が空転してしまう背景ともなってきたわけです。もちろん、日本が世界でも珍しく議院内閣制でかつ二院の力がほぼ同じという仕組みをとっていることもその大きな背景ではありますが、ここに指摘したように本来一体であるべき歳出歳入の法案において、歳出は衆議院が優越するにもかかわらず、歳入は優越しないという矛盾もその大きな理由です。

 さすがに、歳入が伴わない歳出というのは論理的にありえず、しかしながら憲法の規定によってその両方の取り扱いが異なるという状況により引き起こされる混乱はいわば不毛なものであることも事実です。決められない国会、決められない政治の象徴のようにして見られてきたところでもあります。その反省に立って、実は2012年に自民党、公明党、民主党の合意のもとで歳入についても複数年分を一括して成立させることで、このような議会の空転を防ごうという3年間の特例公債法が成立したところでありました。そこから3年が経った今年は、それを受け継ぐ形でプライマリーバランス黒字化の目標年である2020年度までの5年間の法案が提出されたところです。

 もちろん、特例公債はあくまで例外でありますから、それを時の政権に授権することは場合によっては財政規律を緩め、歯止めが利かなくなる可能性をはらみます。当然そのようなことがあってはならないわけであって、今回の5年間の特例公債法も、政府が2020年度のプライマリーバランス黒字化目標に明確にコミットしかつキチンと責任を持って達成することがその条件であるべきなのは言うまでもありません。歳出の見直し、歳入においても経済成長を阻害しない税体系への転換を行い適切な債務管理をする等々、政府与党は現在の厳しい財政状況の中で重い責任を負います。こうした点を明確にし、かつ国民に分かりやすい形でしっかりと説明して納得をいただくということが極めて重要です。そうした意味で、これから3月末までの参議院も含めた予算・財政の議論、極めて重要なものです。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会