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2015-12-16 21:45

(連載1)日本の重大脅威となる「人民元SDR化」

田村 秀男  ジャーナリスト
 国際通貨基金(IMF、本部ワシントン)は11月末の理事会で、中国の人民元を来年秋から特別引き出し権(SDR)への組み込みを決める情勢だ。元はドル、ユーロ、円、ポンドの既存SDR構成通貨と同様、国際通貨としてのお墨付きを得るが、日本にとって重大な脅威となる。通貨とは、覇権国通貨ドルが示すように、国家そのものであり、経済のみならず政治・外交・軍事すべてを根底から支える。元は共産党が支配する通貨である。習近平政権は「国際通貨元」をテコに破綻間際の党主導経済を延命させ、アジアなど外部世界への膨張を加速させるだろう。

 IMFのSDR認定条件は、その国の貿易規模が大きく、通貨が国際的に自由利用可能であることだ。貿易条件は満たしているが、元は党と政府ががんじがらめに管理する不自由通貨だ。ところが、IMFは北京が時間をかけながら市場実勢を反映させるよう外国為替制度を改革すると同時に、金融・資本市場を段階的に自由化していくとの約束を真に受けた。自由化とは党支配の放棄を意味し、党の自己否定である。これまで、国際圧力をかけられて苦しくなるたびに北京は黒を白と言いくるめ、国際ルールを無視してきた。

 中国の国内総生産(GDP)統計は偽装であり、景気実体はマイナス成長同然なのに、北京当局は7%近い成長が続いていると平然と発表する。2001年末、世界貿易機関(WTO)に加盟したが、ダンピング輸出、知的財産権侵害が日常茶飯事だ。外交・軍事では南シナ海の軍事拠点化、絶え間のない外国に対するサイバー攻撃と、あげればきりがない。

 人権の尊重、言論・表現の自由などの制度は、公正な金融市場の基盤だが、党中央は弾圧することしか考えない。元はIMF理事会後、準備期間を経て来年秋にSDR通貨に仲間入りすれば、党にとってのみ存分に利用できる通貨が世界で幅を利かせる。その衝撃はいかばかりか。中国は潜在的には世界最大のマネー創出国である。既存のSDR通貨と元の各発券銀行(中央銀行)による資金発行額のドル換算値を見ると、元資金はドルをしのぎ、円を圧倒している。(つづく)

 
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