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2015-12-03 21:04

(連載1)内部留保課税の議論と法人税引き下げ

鈴木 馨祐  衆議院議員(自由民主党)
 企業の内部留保に対する課税の話が報道をはじめ一部でなされはじめていますので、この点についての私の考えを若干述べさせていただきたいと思います。今回の内部留保課税の話は、若干誤解されている向きもありますが、実は昨年の法人税減税と同じ方向を向いた話です。これは極めて重要な点です。経済活動に大きな影響を与える税制は、中立公平公正という原則が重要であると同時に、所得の再分配機能、すなわち社会政策的側面と、経済成長を促進する経済政策の側面と両方を持っていなければなりません。正直これまでの日本の税制の議論は、経済政策の比重を軽んじてきたところは否定できません。それをもっと成長フレンドリーで、努力する企業・個人が報われるような税制に変えていかねばならない、これが昨年法人税減税を推し進めた次世代の税制を考える会の仲間の共通の思いでした。

 おそらく現在の党内でも、多くの政治家の思いとして、設備投資や人件費、配当に適切な投資を行っている企業については法人税を減税してよりその活動を支援することで経済全体の好循環につなげたい、という点は共通しているといっていいと思います。問題は、法人税の減税を行っているにもかかわらず、多くの企業で適切なリスクテイクをしていない、適切な規模の設備投資や人件費、配当への投資を行っていないという点にあります。この点への不満も同様に党内でのコンセンサスに近いと思われます。

 本来日本経済が力強く民間主導で成長していくためには、民間企業の適切なリスクテイクと投資が不可欠です。それが諸外国やマーケットから不思議がられるくらい、今の環境でもいろいろな理由を並べて適切なリスクをとらず、投資もしない。まさに横並びの悪弊が大企業には見られがちです。これをどう変えていくのか、デフレ「マインド」からの脱却という点でもこの点こそが極めて重要です。

 確かに終身雇用が一般的な日本の労働市場では、終身雇用の継続性の中にいる経営者はリスク回避的になりがちです。「失敗しなければ職務を全う出来る」というマインドが横並び意識や諸外国に比べると遅い投資スピードに繋がってしまっています。長期的にはこうした雇用慣行自体をホワイトカラーについては見直す必要もあろうかと思いますが、もちろんそれは一朝一夕に出来る議論ではありません。一方、今後の経済環境を考えれば、今何らかの行動に出ることが必要です。まさに今総理を始め関係閣僚が経済界との官民対話を行っています。正直なことを言えば、この官民対話にしても内部留保課税にしても普通の資本主義国家であれば本来すべきことではありません。我々誰一人としてこの様な異例の政策を積極的にやりたいわけではありません。(つづく)

 
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