国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2006-12-13 10:58

「開かれた」地域共同体構想とアメリカ

舛島 貞  大学助教授
 12月1日付け寺田貴氏の投稿「『東アジア』FTAと『アジア太平洋』FTA」を興味深く読んだ。APECを利用したFTAAPの提案をどのように捉えるかという点について、ブリリアントなコメントをした一文であった。ここで提案されている、「日本など東アジア域内FTAを推進したい国にとって重要なのは、この東アジアFTAの動きから外された米国を今後どのように扱うかという問題」は確かに重要で、日米FTAの可能性を模索せよという提案も、あながち夢物語というところでもなかろう。寺田氏も指摘するように、FTAAPの形成については、台湾の問題が重要だ。台湾はAPECには加盟しているので、APECにおけるFTA構想には当然台湾も含まれてくる。これは中国にとっては認められることではないし、クリントン政権下における3つのNOにも関わる問題となろう。

 しかし、今回提起された問題は、東アジア共同体構想をアメリカが座視しているわけではなく、その構想が述べる「開かれた」地域主義なるものを試しているものだともいえる。欧州における地域統合は、アメリカの利権を排除したわけではなく、安全保障面でのNATOの拡大をともないながら進行した。欧州統合研究では、アメリカこそがその統合を助長したと言われる所以である。元来、東アジアや太平洋地域の経済や安全保障に強い影響力をもったアメリカが、次第にその影響力を下げている中で、アメリカの東アジアにおける影響力をどのようなかたちで担保するのか、アメリカともども調整していかなければならないのである。民主党が中間選挙で勝利する中で、今後の見通しはまだつかない。また、6カ国協議などでは、強硬な路線を転換し、テーブルに着くことを優先しているようでもある。

 東アジア共同体構想は安全保障面での統合を含むものではない。しかし、地域ガバナンスの形成と安全保障は無関係ではない。また広義の安全保障から見れば、東アジアがアメリカを排除するかたちで地域統合をおこなうことも難しかろう。アセアン+アメリカ、あるいは東アジア首脳会議の構成国とアメリカとの2国間関係をいかに共同体構想にからめていくか、「開かれた」共同体構想の真価が問われていくことになろう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会