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2015-09-17 13:44

(連載1)中国のニューノーマルの金融混迷

坂本 正弘  日本国際フォーラム上席研究員
 2015年夏の中国の株暴落、元切り下げは世界に衝撃をあたえた。上海総合指数(A株)は、昨年の2千台から2015年に急騰し、6月半ば5千を超えたが、その後、急反落に転じ、世界の注目を集めた。8月11-13日中国人民銀行が人民元の対ドル基準値を5%下げ、中国経済への懸念を更に深めたが、天津の大火災も加わった。8月下旬、上海総合指数は、更に急落し3千を切り、東証、米、欧株の大幅安を誘発し、メディアは世界同時株安を報じた。現在、上海A株は3千近辺で上下し、世界に影響している。

 今回の株価暴落、元切り下げの世界への衝撃は強い。第1は中国経済への強い懸念である。中国は高度成長からニューノーマル(新常態)への移行期にあるが、最近の経済指標の悪化が目立った。IMFは2015年8月の中国経済審査報告で、種々の構造改革推進は望ましいが、当面の景気を落ち込ませないようにとの異例の勧告を出している。株暴落と人民元の異例な切り下げは中国の景気悪化への懸念を高めている。

 第2は、中国当局の政策運営への不信である。共産党政権であるが、それ故の機敏性、先見性を持ち、特に、2008年の世界金融危機時の4兆元対策は世界景気を支え、中国の国際的信用を大きく高めた。しかし、今回は、2014年以降の政策手詰まりの中、政府が株を煽った流れがある中で、6月の急上昇に金融を引き締め、株暴落の端緒を作った。しかも、その後、証券会社や有力企業に株売却の差し止めなど権力での市場介入だが、成功していない。8千万人の個人取引者は不満を持っただろうし、更に、株式監察会社や株下落予測の個人までに強権を及ぼす状況への国際的非難は強い。

 第3に、人民元の切り下げは異なる衝撃である。中国の巨大な外貨準備は象徴だが、国際収支黒字の中国に、人民元切り上げはあっても切り下げはないがこれまでの常識だった。2005年の対米レート8.277が2015年8月6.101に切り上り、IMFも元の過大評価は無いとしたが、なお国際収支の黒字は大きい中での、6.401への切り下げだった。中国の輸出入が今年は減少し、資金流出が大きく、外貨準備は14年の4兆ドルから、2015年8月には3兆5千ドルに急減していた背景がある。中国の国際収支が様変わりし、元安・資本流出が続き、外貨準備が減少し、国内の流動性を逼迫させるとすれば、その影響は大きい。(つづく)

 
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