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2015-07-22 05:38

浮かび上がった「共産+SEALDs+朝日」の構図

杉浦 正章  政治評論家
 朝日「天声人語」がアジビラを書くとこうなるという典型が、去る7月12日付のそれである。「若者がんばれじゃなくて、全世代で集まれよ!彼らの呼びかけ通りの壮観である」「勝手に決めるな。それは、決めるのは私たち、主権者は私たちだという叫びである」「投票だけが国民の仕事ではない。『国民なめんな』のコールが起こるのは当然」。何れも達意の名文だったが、プロが見るとデモを扇動しようという邪心が垣間見える。不偏不党の報道機関としていかがなものか。「天声人語」はSEALDs(シールズ)や「ぼくしゅけ」などの主催者団体のプラカードや主張を巧みに文章に取り込んでいる。朝日の“支援”は一部の若者を奮い立たせるに違いない。明らかに青年達をアジテーションで鼓舞して、自ら狙いを付ける安保法制破棄を実現しようというものである。これは同社の先祖の記者達が60年安保条約の改定で作った紙面そっくりである。60年安保の場合はアジり過ぎて、まるで革命前夜。死人まで出す事態となり、在京各社一致のデモ沈静化声明に到って、左翼新聞はようやく敗北を知ることになる。アジだけではない。朝日はデモ団体の広報紙の役割を「しんぶん赤旗」と共に果たしている。

 例を挙げれば、7月11日(社説余滴)の「いざという時が来た」、16日(ウォッチ安保国会)の「若者が紡ぐ反対の声、」、19日(あの筆文字プラカードの作り方、コンビニで拡散)の「メッセージを発信したい側はセブン―イレブンやローソン、ファミリーマートなどにある複合機で番号を入力すると、印刷できる」といった具合。デモ拡大に社を挙げて“協力”している。17日電子版の「安保法案、立憲主義に反する、学生ら21日、反対デモ」の記事では、SEALDsKANSAIのデモの道順を報道、「詳しくは団体のウェブサイトへ」という具合だ。明らかに「不偏不党の地に立って言論の自由を貫く」とした朝日新聞綱領などをかなぐり捨てて、なりふり構わぬ「デモ扇動新聞」と化している。一方、「しんぶん赤旗」にいたっては、連日デモの日程を掲載している。とりわけSEALDsとの関係が濃厚に見える。「赤旗」は言うまでもなく共産党の資金源であり、機関紙である。その特徴は自分の味方と思っている人物や組織しか報道しない。元自民党代議士の藤井裕久、古賀誠などがしょちゅう出てくるのは“味方”と思っているからである。親戚の原水協は報道しても、原水禁は報道しない。ネットで専門家は「共産党系とそうでない団体の判別法を教えてあげよう。赤旗で無条件に、積極的に紹介している団体。これが共産党系。同じような趣旨の団体でも、社民党系や新左翼系など自分たちの言うとおりにならない団体は、報道しないのがしんぶん赤旗だ」と説明しているが、明快だ。別の専門家は「SEALDsの正体は共産党系列の民青。無党派を装い、学生代表の様に声を上げる」と断じている。最盛期の1970年には民青の数は約20万人を数えたが、近年は2万人程度で推移しているようだ。パンフレットは「高校生から社会人まで全国に2万人」としている。まさに高校生にまで入り込んでおり、アジればデモに参加するくらいの力はあるのだろう。

 こうした図式を見ると、共産党は明らかにSEALDsなどデモ集団とつながりをもち、民青の勢力拡大を狙っているらしい。朝日はSEALDsなどをアジテーションで積極的に動員する役割を分担していることが分かる。まさに「共産+SEALDs+朝日」の構図が今回の安保法制反対運動の構図であるのだろう。こうした構図を知ってか知らずか民主党も、「SEALDsバス」に乗り遅れまいと懸命だ。幹事長・枝野幸男は民法テレビでデモを褒めちぎり「今回の主役は国民の声と安倍首相との戦いであり、我々は主役ではない」とまで言い切った。枝野の描く戦術は参院の審議を通じてデモを盛り上げ、政権への圧力を増幅させるというものであり、かつての社会党が「アンポハンタイ」で取った国会の内外を呼応させる戦術をそのまま踏襲するのだろう。その思惑は、60年安保のデモのシュプレヒコールが「アンポハンタイ」から「キシヲコロセ(岸を殺せ)」に変容したことを参考に、最終的には倒閣運動に結びつけようとしていることであろう。枝野はテレビで「法案を止めるには総辞職か解散しかない。まずは総辞職、安倍内閣退陣で廃案に持ってゆく」と、内閣打倒を宣言した。それではこの戦略が成り立つかどうかであるが、とても無理だと思う。安保で岸は退陣したが、当時自民党内は松村謙三、石橋湛山、宇都宮徳馬ら反主流派が、中国の「意向」を受けてアンポハンタイを打ち出し、主流派との党内抗争の状態であった。安保条約改定に反対して本会議を退席した議員は12人いる。しかし主流派の方が圧倒的に力が強く、政変を起こす力はなかった。むしろ岸の退陣はデモで樺美智子が圧死したことなど社会情勢の激動が、大きく作用していたように思える。

 今回の場合、党内事情は盤石と言ってもよいだろう。問題は、SEALDsなどと野党の“連携”が何処まで発展するかだが、ここは政府・自民党は積極的に対応策を打ち出す必要がある。「獅子は小虫を食わんとてもまず勢いをなす」というが、油断せずに、全力を尽くして立ち向かうべきだ。まず市民運動への対抗策である。相手が「戦争法案」のデマ作戦なら、自民党は「共産党に子供を取られるな」「子供を共産党から守れ」などのプロパガンダであろう。両親が息子や娘に共産党が喜ぶ行動をすることを戒めるよう説得させるのだ。それには自民党は、情報戦に乗り出す必要がある。内調情報のリークでも何でもよい、とにかくデモの背景や実態をメディアを通じて明らかにするのだ。もちろん安保改正時と同様な中国の「工作」があればそれを暴露する必要がある。

 また参院審議では、先に述べたように自民党の質問を、事前の調整で充実させるのだ。新聞はこれまで自民党だとろくろく報道しないが、政府答弁にニュースを盛り込み、新聞が書かざるを得ないように仕向けるのだ。また安倍のネットトークも好評だ。継続すれば良い。ネットは一人で見るのが普通だが、7月20日のフジテレビは絶賛できる。安倍の分かりやすい説明と、小道具を使った巧みな演出に、家内と食事をしながら議論できた。ほかの家庭でも親子が議論したケースも多かっただろう。議論は理解につながる。公共放送であるNHKもデモばかり翼賛していないで、当然同様の放送で国民への周知に協力するべきだ。ただし司会は左傾化解説委員にやらせてはならない。フジで安倍は「支持率のために政治をやっているのではない。やるべきことはやっていきたい」と述べた。NHKで自民党副総裁・高村正彦も「支持率を犠牲にしてでも、平和と安全を守るために国民のために必要なことをやってきたのが、わが党の誇るべき歴史だ」と言明したが、一連の発言には感動した。この真摯な自民党の姿こそ責任政党とデマゴーグ政党を分けるものである。日本人は馬鹿ばかりではない。やがては支持率挽回につながるのだ。
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