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2015-03-26 17:02

(連載1)安倍ドクトリンの問題

加藤 朗  桜美林大学教授
 さる3月20日、自民党と公明党が、新たな安全保障法制の基本方針について正式合意した。遂に吉田ドクトリンに代わる安倍ドクトリンとでもいうべき、国家安全保障戦略の大転換が現実となった。振り返ってみると、安倍政権は安全保障戦略の方針転換を一気呵成に行ってきた。2013年12月4日国家安全保障会議発足、同月6日特定秘密保護法成立、同月17日国家安全保障戦略策定、2014年4月1日防衛装備移転三原則閣議決定、7月1日集団的自衛権行使容認閣議決定、そして2015年3月20日の新たな安全保障法制の制定である。

 安倍ドクトリンの最大の目的は、対中国抑止にある。そのためにはアメリカの抑止力が不可欠である。アメリカの抑止力を確実なものにするためには、自衛隊とアメリカ軍との軍事協力関係を密接(自衛隊が事実上米軍の隷下に入るということ)にすることが何よりも重要だ。そのために安倍政権は、特定秘密保護法で日米間の情報共有を確実にし、防衛装備移転三原則で日米間の武器開発・製造を円滑にし、そして集団的自衛権行使容認で自衛隊の活動の場を拡大し、安全保障法制で米軍と共に戦う態勢を法的に整備するなど、着実に手を打ってきた。

 とはいえ、安倍ドクトリンによってはたして抑止力は高まるのか。安倍ドクトリンの問題は、アメリカの抑止力の信頼性である。抑止の能力から見れば、日米の軍事の一体化が進めば、抑止力は高まる。いずれ中国の軍事力は質、量とも自衛隊を凌駕するにしても、米軍が日本に協力すれば、日米合同軍に中国は太刀打ちできない。しかし、問題はアメリカに日本と協力して中国を抑止する意志があるかどうかである。はたして日本が安倍ドクトリンによってアメリカに軍事協力という恩を売るだけで、アメリカの抑止の意志が高まるだろうか。

 中国側はまさに、この点をついて、心理戦、歴史戦を仕掛けている。中国は米中がかつて第二次世界大戦で日本と戦った同盟国であることを強調し、また戦後レジームからの脱却を主張する安倍首相に歴史修正主義者のレッテルを張って日米の離間を図ろうとしている。安倍首相も靖国参拝をしたことでアメリカから猜疑心を持って見られており、レーガン・中曽根、ブッシュ・小泉政権時代ほど安倍・オバマの信頼関係は深くない。日米関係がどこまで緊密化できるかは、国家安全保障の基本理念の「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値」をアメリカとどれほど共有できるかにかかっている。とはいえ、米中関係には常に第二の「朝海の悪夢」(1972年のニクソン・ショックのように事前通告なしの米中関係改善が行われること)の恐れがあることを念頭に、日本は対米関係を考える必要がある。(つづく)
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