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2015-03-03 06:49

諸悪の根源は政治資金規正法にある

杉浦 正章  政治評論家
 悪法は成立させた国会の責任であり、首相の任命責任を問うのは、はっきり言って筋違いではないか。正すべきは、国民の血税を政治家に還流させることを認めた政治資金規正法にあるのであって、そのザル法的性格はかねてから指摘されているところである。首相・安倍晋三は「違法行為でないことは明か」との主張一点張りだが、悪法であれば正すのが首相の役目であり、姿勢であるべきだ。民主党は政権政党の頃どうして規正法改正に踏み切らなかったのか。労組による団体献金が禁じられるのを恐れたのか。公明党代表・山口那津男が宗教団体お抱えで選挙戦を展開しながら、「説明責任を果たせ」と発言するのは良いが、規正法の欠陥を突かないのは、自らにふりかかる問題があることを危惧してのことか。国会、政党こそが姿勢を正すべき事だ。辞任した農水相・西川公也だけでなく、望月義夫環境相の政党支部も、国から補助金を支給された静岡市の物流会社から140万円の献金を受けていた。ほかに、上川陽子法相の政党支部にも同じ会社から60万円の献金があり、問題になっている。まだ首をすくめている大物議員が与野党に多数居ると言われている。

 疑惑の核心は規正法にある。同法第二十二条の三は、「国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない」と規定するとともに、「規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない」と付け加えている。これが意味するものは、「補助金企業からの献金の奨励」に他ならない。
なぜなら、まず「1年後まで寄付をしてはならない」とは「1年後ならいい」と言うことになる。これは国民の血税は、政党助成金として1人あたり250円分が各政党に配られており、これに“追銭”をすることに他ならないからだ。そもそも有権者の了承なしに国税を国会議員に還流出来るような法律自体が、国民をなめていることになるのだ。加えて馬鹿馬鹿しいほどザル法なのは「違法寄付を知りながら政治家が受けてはならない」という部分だ。知っているか知っていないかは、政治家の心の中の問題であり、外部から公正な判断が出来ることではない。それが法律の条文であることの規制力の無さは、もはや法律とは呼べない問題を露呈している。

 政治家の場合は、献金してもらっても、補助金企業であるかどうかは分かりづらい側面があることは認める。しかし、60万円から140万円規模の寄付を、相手がどういう会社かも十分認識しないまま、受け取ること自体が本来あり得ないことであろう。一方で悪質なのは、献金する企業である。献金側の社長はまさか自分が補助金企業であることを知らないまま国会議員に献金することはあり得ない。国会議員への献金はおそらく社長専権事項であるからだ。その社長が何らかの思惑なしで献金することもあり得ないだろう。例えば補助金をスムーズに続けてもらいたい意図が背景にあることは間違いあるまい。これは明らかに斡旋収賄罪に結びつきかねない問題である。こうした血税還流の持ちつ持たれつの関係を、規正法は条文に書くことによって“奨励”しているのである。これでは天下の御政道はなり立つまい。少なくとも安倍は、この欠陥法の改正を行う姿勢を示すべきであろう。

 一方野党は、かさにかかってはいけない。諸悪の根源はザル法にあるのであって、安倍の任命責任を問うのは酷だ。民主党政権の2人の奇想天外首相と異なり、安倍は歴代まれに見る正統派首相である。おまけにアベノミクスが過去十数年の歴代首相の成し遂げられなかったデフレからの脱却の糸口を見つけつつある。その外交・安保路線は、民主党政権時代にうちひしがれた日本の活力を取り戻すのに貢献している。過去1年そこそこで首相が辞任に追い込まれて、辞めるのが常態化しているが、少なくとも国民の安倍への支持率は高い。最近の国民の判断は総じて優秀だ。政権を追及するのなら、経済、安保、外交で論戦を展開すべきだ。それに予算を人質に取れば、確実に批判の矛先は野党に向かう。自民党は3月13日に衆院予算委で締めくくり質疑を行い、予算案を参院に送る。参院は良識の府である。まだ審議の方法によっては年度内成立も不可能ではないぎりぎりの局面だ。いずれにせよ野党は4月3日の統一地方選告示日後に成立を長引かせるつもりはあるまい。成立が遅れれば、困窮する地方財政への影響は大きく、もろに選挙に影響が出てくる。それなら見当外れの首相責任論などにこだわらずに、年度内成立に協力するべきだ。国会後半は安保法制など難問山積であり、野党はここで徹底的な論戦を挑めば良い。
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