国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-02-16 09:01

(連載2)破綻国家より独裁政権の方がましか

中村 仁  元全国紙記者
 こんな中で、イエメンで政権が崩壊し、内戦の危機に陥っています。国家の不安定な状況は、過激派武装組織が勢力を拡大する素地を作りだしているとされます。リビアでは、「イスラム国」は地下の傘下組織と連携し、新たな勢力圏を広げる動きをみせています。地元のテレビ、ラジオ局を占拠し、悪名高い指揮者、バクダーディの声明を流したといわれます。リビアのカダフィ政権が崩壊した時は、日本を含め、西側のメディアは刻一刻、政権が追い詰められていく様子を報じました。拍手喝采する空気が覆いました。軍部を背景にした独裁政権は民衆を弾圧し、欧米型の民主主義国家の価値観と相容れないので当然でしょう。

 問題は独裁政権が崩壊したのちも、民主政治が育たず、国家が破綻すると、過激派が伸張し、兵器、武器を押収し、支配地域の拡大に使うという際限のない悪循環です。事態は独裁政権のあったころよりも悪化する。そうした展開が中東、北アフリカに集中的に起きているのです。イスラム過激派の非道な行動には、徹底的に軍事力で対抗していかねばなりません。問題はあまりにも各地に広がったかれらの勢力を、軍事力による封じ込めだけでは、削ぐことができそうにないことです。とにかく既存の国家が破綻することを優先して考えねばなりません。国家の破綻はさらなる混乱の始まりになるに違いありません。それが「イスラム国」の衝撃から学ぶ教訓です。

 独仏、ウクライナ、ロシアがようやく停戦合意にたどりつきました。長引く戦闘でウクライナの経済は破綻寸前とされます。ロシア経済も欧米の経済制裁、原油暴落、通貨ルーブルの急落で、経済危機が深刻になっています。停戦合意の順守に向け、国際的な圧力が重要だと、新聞の社説などは指摘しています。果たしてロシアを徹底的に押さえこむ力が国際機関や欧米にあるかどうかが問題です。理想は理想として追い求めながらも、ロシアもウクライナも、国家として綻びが生じないようにもっていくことを優先させる時代に入ってしまったような気がしてなりません。

 欧米型の民主主義国家、ロシアのような事実上の独裁国家、中国のような共産党独裁の国家、軍部が国のまとまりを主導する国家などが並存するのをしばらくは許容するしかないということでしょうか。それぞれの国でそれぞれやってもらう。国家はいずれは民主主義体制に移行していくものだという道筋は、現実的ではないようにも展望されますね。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会