国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-02-09 09:48

(連載2)「イスラム国」のYOUTUBEテロ

加藤 朗  桜美林大学教授
 さらに洗練された手法を用いているのが「イスラム国」である。アルカイダがアラビア語とせいぜい英語で発信していたのに比べ、「イスラム国」はアラビア語、英語はもちろん、ドイツ語やフランス語など多言語で発信している。またハリウッドなみの演出を施した画像をYOUTUBで配信している。今回の人質事件はネットやYOUTUBEなしでは実行できなかった。さしずめYOUTUBEテロといって良いだろう。

 ネットの発達によって、もっとも劇的な変化が起きたのは、既存のマスメディアとテロ組織との関係である。これまでテレビや新聞などの既存のマスメディアは、テロ組織のメガフォンの役割を果たしてきた。どのように報道されようと、テロ側にとって十分に宣伝効果はある。しかし、ネットの発達でテロ組織は既存のマスメディアに頼ることなく、自らの主張を世界中にくまなく発信することができるようになった。つまりテロ側にとって既存のマスメディアは 不要になったのである。イスラム国が記者を次々に人質に取るのも、記者の役割がテロ組織にとって低下したことの表れである。

 事実今回の人質事件を見ても、現場での取材はほとんどなく、犯人側の要求をYOUTUBEやツイッターで探すなど、マスコミの取材現場はサイバー空間になっている。現地対策本部の置かれたアンマンの日本大使館前からの中継ほどむなしい報道はなかった。各局ともネット情報以上の報道はほとんどなく、日本大使館を映すばかりであった。

 テロの舞台がサイバー空間に移ったことで、これまでとは全く異なるテロ対策が必要になってきた。画像は合成ではないか、常に真偽のほどを確かめなければならなくなった。メールもなりすましではないか確認が必要になる。そして最大の問題は、テロ組織によるネットを通じた広報、宣伝を規制するのか否かであ る。一部では「イスラム国」のネットを規制すべきだとの意見も上がり始めている。しかし、ネットの自由を原則にしている日本をはじめ欧米自由諸国は簡単にはネット規制には踏み切れないだろう。さりとて「イスラム国」の宣伝を野放しにすれば、彼らはさらにテロをエスカレートさせるだろう。 「イスラム国」のテロの狙いは、テロの語源そのものである「恐怖による支配」だ。まさにネットやYOUTUBEはテロにはうってつけのメディアである。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会