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2015-01-08 11:28

(連載2)「競争政策と公的再生支援の在り方」について

鈴木 馨祐  衆議院議員
 そして、是正措置をとりうるタイミングについて、「公的再生支援が開始された後においては、被支援事業者の市場における地位が競争上優位になった原因が、公的支援によるものなのか又は被支援事業者の自助努力によるものなのかどうかの判別が難しくなるため、支援開始後に、被支援事業者が競争上優位になったことのみをもって影響最小化措置を採るとした場合、被支援事業者自らが経営努力を行うことによって効率性を改善しようとするインセンティブを低下させるおそれがあると考えられる。また被支援事業者のみならず、被支援事業者のステークホルダーにとっても、競争上優位になったことをもって支援開始後に影響最小化措置が課される可能性があるとなると、事業再生の道筋が不透明になり、自らの出資や融資等に対するリターンが不確実になるため、当該事業者のステークホルダーが当該事業再生にコミットしようとするインセンティブが損なわれることとなる。以上を踏まえると、影響最小化措置の実施の要否及び内容については、支援決定時にあらかじめ決定される必要がある。」とし、実施のタイミングについても「(支援決定時には予測できなかった経済環境の急激な変化等があった場合を除き)支援期間中に実施すべき」と明確にされている点。

 さらに、こうした点を踏まえて「被支援事業者が当初の想定以上に競争上優位に立った場合において、事後的な競争回復策を採ることについては、被支援事業者が事業再生を行おうとするインセンティブや当該事業者のステークホルダーが当該事業再生にコミットしようとするインセンティブを損ねるものであり、適当ではないと考えられる。」と明確にしている点。

 そして、これらを前提とした上で、公的規制制度のもとにある産業の場合には、「規制当局が、競争のゆがみを是正し、競争環境を確保する観点も踏まえて、許認可を含む処分を行う場合があり得る」としながらも、その場合の処分は、「市場における競争の活性化を促すことによって競争環境を確保するという方向で」行われるべきとし、上記で明確にされた諸原則との齟齬を来さない、新規参入を促すことに重点を置くべきとした点。

 まさに、最優先で考えるべきは競争の活性化による消費者の便益であり、「ゆがみ」を新たな「ゆがみ」で是正する、つまり被支援事業者の生産量や投資等を制限することでかえって現時点での競争を制限してしまうような事態は避けるべきであるという点を明確にし、また企業再生の観点から、再生企業及びそのステークホルダーのインセンティブを失わせるような予見可能生を著しく損なうような事後的な措置を厳に戒める内容となっています。今後の公的再生支援の在り方を考える上で、非常に意義深いペーパーが公表されたところでもあり、現在進行中の案件・行政行為についても、この方向性に照らして今後改めて妥当性を検討していく必要があると思われます。(おわり)
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