国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-10-24 10:12

盛り上がる「円安」の議論を考える

鈴木 馨祐  衆議院議員
 「円安」という言葉が最近よく取り沙汰されるようになってきています。確かに実質実効レートで考えると、レベル的には円の価値が弱くなっているといえなくもありません。そして、円高であっても円安であっても変化が急激であれば、その影響も相対的に大きくなりがちです。急激な変動をなるべく抑制するのは、円滑な経済活動を考えれば政府の必要な責務です。また、為替のレベル感の問題としても、円高局面であろうが円安局面であろうが、それぞれの見方から批判をすることは不可能ではありません。

 当然、政治家、特に与党の政治家は為替や株などの相場について直接的な発言をすることは控える必要があると思われます。しかし一点だけあえて申し上げるとすれば、政治家の立場からすると、やはり国内の雇用、特に製造業の雇用を国内に維持することが出来るか否かは極めて大きなポイントであることを忘れるわけにはいかないのだと思います。現在為替が円高の修正に動いているにもかかわらず、輸出が伸びてない、これは事実です。そして、その背景に製造業がその拠点をかなり海外に移したという実態がある、これも事実だと思われます。しかし、だからといって、円高よりも円安方向への動きの方が今の日本にとって問題が大きいのだから、金融政策を含めて逆方向を模索すべきというのは、若干短絡的すぎる議論といわざるを得ません。

 実際、為替の水準が、相対的には対ドルでも対ウォンでも対人民元でも、円安方向に動いているからこそ、製造業の拠点の流出のペースが抑制されているのが実態です。むしろ、現在の電気料金や社会保障の負担の大きさを考えれば、もし今円高の方向に動いていたとしたら、製造業の拠点の海外移転の動きは今以上のペースで加速をしていた可能性は極めて高い。そして、いったん海外に移った拠点を再び国内に戻すというのは、事実上不可能に近いといわざるを得ません。国内に「維持」する方が遥かに労力は少なくて済むというのが現実です。

 これらを考えれば、今一部で出てきている「円安」に関する議論は、慎重にされねばならないと思われます。もちろん、対策が必要な分野も無くはないと思いますが、あくまで今の日本経済の実態を考えれば、「円高」政策に転換するというのは取り得ない選択肢ではないか、と思わざるを得ません。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会