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2014-10-11 04:17

(連載1)国際関係激動の年である2014年

坂本 正弘  日本国際フォーラム上席研究員
 残すところあと3か月を切った2014年は、まさに国際関係における激動の年であるといえる。そのことについて、いくつかのキーワードに沿って、述べていきたい。まず、「冷戦崩壊の余震強まる2014年」ということである。2014年の状況は、冷戦崩壊という米ソの国際関係統御形態の激変が、4半世紀後も深く、強い余震を及ぼしていると感じる。すなわち、ソ連崩壊は米国を唯一の超大国としたが、欧州では脅威の崩壊から、西側の団結は緩み、NATOは空洞化した。逆にEUの東への拡大はロシヤの警戒心を高めた。東の中国は、ソ連との7千キロの国境が2千キロに縮小し、北の脅威から解放され、高度経済成長を満喫した。

 21世紀に入ると、米中関係が国際関係の焦点となった。特に世界金融危機の2008年後は、中東関与と財政赤字に悩む米国と、金融危機をバネに、GDPで世界NO.2、 貿易でNO.1となった中国の台頭が目立った。中国は南シナ海、東シナ海で強硬姿勢を示すと共に、国際社会に独自路線をとり、米国もアジア回帰路線を取った。国際関係はの中核は今後も米中関係がだろうが、2014年はロシヤ・ウクライナ情勢の緊迫化と中東でのISISを巡る緊張が国際社会を激震している。さらに香港情勢の影響も見逃せない。

 次に「ロシヤ・ウクライナ情勢の混迷」ということである。ロシヤについて、2014年3月のクリミヤ併合後も、ウクライナの内紛に介入する状況は、欧州諸国のロシヤへの警戒心を強めた。米欧がロシヤへの経済制裁を強め、新冷戦の標語も出る中で、NATOの役割が高まった。ウクライナ・プロシェンコ大統領は米議会で熱弁をふるい、米国の支持と援助を要請し、EUとの関係強化を目指しているが、プーチン大統領はウクライナ東部を支え、ウクライナに中立を迫り、中露接近が答えとの強い態度である。最近の「Foreign Affairs」では、シカゴ大学John Mearsheimer教授は“Why the Ukraine Crisis is the West’s Fault ”の論文で、「西側は自由という幻想で、ウクライナにまで領域を拡大し、プーチンを怒らせたとし、中国がカナダやメキシコを軍事同盟に囲うとしたら米国民の怒りはどんなものか?」と問う。「米国はウクライナの西欧化でなく、中立化を目指すべし。ロシヤは衰退大国であり、争う必要がないが、シリヤやイラン、特に中国への対応に必要だ」とする。米国にこのような意見もあるが、当面は、むしろ制裁を強める動きで、プーチン大統領も妥協の様子はなく、ロシヤと西側、特に米ロ関係に出口が見えない。

 次ぎには、「ISISの脅威」ということがあげられる。2014年6月、ISISシリア・イラク・イスラム国がモスルを陥落させ、多額の資金と多量の武器を手に入れ、バクダッドへ向けて進撃するなど、世界を震撼させた。その後、政府軍もバクダッド防衛に力を注ぎ、クルド軍を米国が空爆などで支援し、一部盛り返しているが、イスラム国家はシリヤとイラクに跨る地域を支配し、欧米諸国など世界からの多数の外国人戦闘員の参加があり、その勢いは衰えていない。しかも、無辜の人質の身代金を取り、人質の処刑を放映し、恐怖を煽る。オバマ大統領は9月10日、ISIS をテロ集団と位置づけ、これを壊滅させると、強い声明を出した。9月末、シリヤ地域の空爆を湾岸5か国と行ったが、仏、英、和、豪などの諸国の参加が続き、トルコの参加も期待されている。オバマ大統領は、国連総会に続き、安全保障理事会を主宰し、ISISに参加する外国人テロ戦闘員の処罰を加盟国に義務付ける決議に成功した。空爆の効果があるが、シリヤではアサド政権と反政府軍、イスラム国家の3巴の複戦いとなり、楽観できない。空爆がアサド政権支持の効果をもつのは皮肉である。(つづく)
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