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2014-09-25 06:57

「小渕首相候補生」は原発再稼働がカギ

杉浦 正章  政治評論家
 婆さん閣僚が多い中で40歳の経産相・小渕優子は何と言っても花だ。父親の恵三は田中派時代からよく知っているが、優子の政治センスは明らかに親父を上回る。麻生政権の少子化担当相の時に第2子を懐妊するなどという離れ業は並大抵のセンスでは出来るものではない。内閣改造で原発再稼働が最大の課題である重要閣僚に就いた。これで女性首相候補としては、今は落ち目だがまだ目のある野田聖子、窓際の小池百合子、パフォーマンスの蓮舫などを尻目にリードした感じが濃厚だ。政調会長・稲田朋美がなかなか行動力があるが、ちょっと右寄りにバランスを崩しすぎだ。もっとも小渕には最大の難関が待ち構えている。在任中に再稼働申請中の12原発19基の稼働を実現できるかどうかだ。それが出来れば、フォークランド紛争で圧勝した英国首相・サッチャーのような“鉄の女”に昇格できるかも知れない。女性政治家につきものの「危惧」を払しょくするためにも不可欠だ。クリアすれば、石破茂の次に首相の座を狙うことも現実味を帯びてくるだろう。

 小渕はNHKで原発再稼働について「原子力発電を持たない選択をすることは将来を視野に入れたエネルギー政策を考えれば難しい選択だ」と言い切った。安倍政権で一番泥をかぶる要素の強い課題に真正面からチャレンジしようとしている。川内原発の再稼働に「国が責任を持つ」として、事故対応への関与を強調した文書を鹿児島県知事・伊藤祐一郎に渡し、知事は「政府の考え方が明確に示された」と歓迎した。しかし川内再稼働は皮切りにすぎない。原発反対派が手ぐすねを引いて待ち構える原発は多く、ひとつひとつを解決してゆくには極めて強靱な意志と決断力が不可欠だ。政府は川内再稼働の後は規制委がゴーのサインを出せば、いちいち個個の原発再稼働に政治判断を下さなくてもよい「自動再稼働」の方向に持ってゆくべきだが、小渕はそれに先鞭(せんべん)をつけることも必要となろう。

 それが実現できれば他の女性候補に大きな差をつけられる。まさに政治家としての力量が問われる人生最大の難関と言ってもよい。小渕は、物腰が柔らかくソフトな印象を受けるが、芯は強い。麻生太郎が「崖っぷち解散」に追い込まれた2009年の総選挙は、臨月で選挙戦を展開することになったが、自民党逆風の中でただ1人圧勝。自分ばかりか他の候補も「ここで産んでもいい覚悟で来ました」と応援したというのが伝説となっている。ブルームバーグ通信とのインタビューでは「私がどうしてもやらなければならない仕事なのに、『子育てがあるのでやりません』というわけにはいかない。できるだけ子どもがいることが言い訳にならないようにやろうと思ってやってきている」と述べ、育児と政治を切り離す決意を鮮明にした。また女性首相の誕生について「決して遠い未来ではない」と意欲的ともとれる発言をしている。頭の回転も速いエピソードがある。第2次安倍内閣発足時に入閣を打診されたが固辞。財務副大臣に就任したが、これを副総理に内定していた麻生太郎が「大臣をやって副大臣というのはいかがなものか」と茶化したが、小渕は「総理をやってから副総理をやっている人もいる」と切り返したといわれる。酒も強く野田聖子とは酒友だ。「日本酒を愛する女性議員の会」の会長は野田だが、幹事長は小渕。野田は小渕がバーボン・ウイスキーをラッパ飲みする姿を見たことがあるという話が、永田町で出回っている。

 その野田は女性議員で首相候補生になりそうな議員の最右翼であったが、いまは落ち目の三度笠。総務会長でありながら集団的自衛権で安倍に楯突いて干された。ブログで「大きな役職を離れ、初心に戻るために、自民党ではフリーとなる」と宣言しながらも「沈んだときこそ、大切なこと、大切な人、見えてきますよ」としおらしい。再び台頭しそうだ。小池百合子は全くぱっとしない。蓮舫が海江田降ろしの先頭に立ったが、どうもパフォーマンス臭がしていけない。民主党でしかも参院議員では駄目だ。稲田朋美が政調会長になって注目されるところだが、首相候補になりたいのなら右寄り姿勢を改めないと無理。「教育体験のような形で、若者全員に一度は自衛隊に触れてもらう制度はどうか」などと自衛隊体験の義務化を唱えているようでは話にならない。女性の首相候補が出てくることはよいことであるが、まだまだ政治の世界は男社会だ。世界経済フォーラムが毎年発表する男女平等(ジェンダー・ギャップ)指数では日本は105位。企業の課長以上などを「管理的職業従事者」というが、内閣府の調査ではこれに女性の占める割合は、フィリピン52.1%、米国43.1%、イギリス34.5%、ドイツ30.3%なのに、日本は11.1%にとどまっている。儒教の影響、封建社会の風習など歴史的に女性は家庭を守り、夫を差し置いて表に出ない伝統が数字となって現れている。小渕がこれを破る突破口となるかどうかは分からないが、自民党が危機的な状態に陥ったときの“女神”の役割を果たしうるかもしれない。
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