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2014-09-05 10:42

消費税ショックの日本と不動産バブル不安の中国

田村 秀男  ジャーナリスト
 消費税増税ショックは「想定外」の激しさである。4~6月期の国内総生産(GDP)第1次速報値では、GDPの6割を占める家計消費が5・2%減(年率19・2%減)と、戦後最大級の落ち込みぶりで、これまで日本経済の先行きに楽観的だった海外メディアも「アベノミクスに試練」(英フィナンシャル・タイムズ8月14日付社説)と騒ぎ立てた。アベノミクス頓挫は、20年デフレが30年デフレになるばかりではない。安全保障・外交の国際社会で日本は中国に対する弱小国、負け犬として扱われかねない。

 ところが、国内メディアの報道をみると、国内景気を楽観する一方で、膨張する中国についての現実を見ようとしない。日中のGDP(名目)をドル建てでみると、アベノミクス効果が出たはずの2013年の日本は4・9兆ドルで、前年比で17%減、対する中国は9・2兆ドル、同12%増と、日本との差をさらに広げている。GDP速報値から推計すると今年前半は、日本が前年比0・2%減、中国9%増でますます水をあけられそうだ。円安、人民元高が作用しているとはいえ、国際比較はドル建てなのだから、「萎縮する日本、膨張する中国」の基調は依然持続している。

 中国の「不動産バブル崩壊」を期待する向きもある。だが、バブル崩壊というのは発達した自由市場経済で起きる現象である。不動産暴落とともに金融不安が起き、金融の流れが急激に萎縮して国内経済が大不況に陥る。中国の場合、共産党の支配下にある中国人民銀行が4兆ドルもの外貨資産を担保に人民元資金を発行し、金融機関に資金を流す。あるいは、緊急事態には党指令で、問題金融機関にドルを資本注入できる。日本のバブル崩壊期の「飛ばし」が国家的規模で行われる可能性が高い。これまでにも、飛ばされた巨額の不良債権は経済膨張のプロセスの中で、もみ消されてきた。その結果、中国の資源の浪費や汚染物質の大量排出が止まらないから、住む場所やエネルギーなど資源を求めて外部への膨張を続け、数々の摩擦を世界的に引き起こす。そこでモノを言うのはカネ、人民元だ。

 中国の対外貿易総額はアジア向けを中心に膨らみ続け、13年は日本の2・7倍にも達した。同年、中国の対外貿易での人民元による決済額は日本のそれの円による決済額を初めて上回った。人民元7080億ドルで前年比57%増、円は16%減である。日中とも自国通貨建て貿易は東アジアが主なのだが、円は人民元によって駆逐されつつある。中国の海洋進出にASEAN各国が警戒するのだが、その足下では経済の対中依存が高まりを見せており、結束して毅然として中国に対峙できるはずはない。安倍政権は冷厳な現実を踏まえて、これ以上の増税をやめ、これ以上の自滅を食い止めるべきだ。
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