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2014-08-27 06:48

大災害続発を直視して原発を早期稼働せよ

杉浦 正章  政治評論家
 この異常な災害の続発をどうとらえるか。広島市で発生した土砂災害は、痛ましい限りだ。死者66人の大惨事となり、まだ増える。礼文島では50年に1度の大豪雨。台風被害も拡大。米国では史上空前のハリケーン被害が続出。明らかに地球温暖化がもたらす異常気象だ。そして温暖化の主因は、誰が見ても化石燃料が排出する二酸化炭素(CO2)の垂れ流しだ。その一翼を担っているのが紛れもなく日本だ。先進国でただ一国原発を稼働せず、電力の9割を化石燃料に依存している。クリーンエネルギーである原発再稼働は、政治的思惑があるのか先延ばしの一方だ。最適な電源構成(ベストミックス)すら統一地方選絡みでまとまらない。このままでは首相・安倍晋三が9月の国連地球温暖化防止サミットで孤立する可能性が出てきた。まがりなりにも大飯原発3号機と4号機の再稼働を実現させた首相・野田佳彦のリーダーシップが懐かしくなってきた。

 安倍政権も最初は原発再稼働で勇ましかったが、最近は原子力規制委任せで動きが鈍い。国政選挙や都知事選を全て原発再稼働を掲げて勝ち続けたことを忘れて、安部側近はなんと地方選挙への影響を唱えるまでになった。4月に閣議決定したエネルギー基本計画にも、原発の割合を示す電源構成は盛り込まなかった。公明党など与党内で原発の比率を明示することに抵抗が強かったためだ。規制委が「ゴー」のサインを出した川内原発の再稼働も、酢だのこんにゃくだので来年に先延ばしだという。そこには安倍のリーダーシップが全く見えないのだ。そうこうするうちに毎年4兆円近い国富が化石燃料でどんどん流出。電気料金は値上がりする一方で、アベノミクスのブレーキになっているのに無視している。それより深刻なのは、CO2垂れ流しによる気候大変動への影響だ。原発反対論者は、少しは感情論を排して科学を勉強したらどうか。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書は「20世紀後半に観測された地球温暖化の主因は95%が人間だ」と断定している。そして「二酸化炭素排出量の削減が喫緊の課題」と指摘しているのだ。喫緊の課題を解決するには原発稼働しかないのは常識だ。再生可能エネルギーなどは遠い未来の空想科学小説の領域だ。

 世界的な世論も、日本のリベラリストと異なり、米国のリベラル派は現実を直視する洞察力が強い。ニューヨークタイムズは社説で「原子力に危険が伴うのは事実だ。しかし過去に起こった原子力事故は石炭、ガス、石油といった化石燃料が地球に及ぼすダメージには遠く及ばない」と分析。「再生可能エネルギーが化石燃料に取って代わる日ははるかに先であり、それまでは原子力が大気中の温室ガス増加対策で貴重な発電手段であり続ける」と結論づけている。自らの非を認めて転向するケースも多い。有名な映画監督・ロバート・ストーンは、その信条を反核一辺倒から一転させ、地球環境保護のためには原子力の活用が必要であると唱え始めた。原発推進派に転じた知識人たちの声を集めた映画「パンドラの約束」を公開している。JR東海名誉会長の葛西敬之はその論文で「チェルノブイリの死者は31人だが火力発電の死者数はその何千倍にも及ぶ。大気汚染による死者数は年間100万人を超え、その3割は火力発電による」と分析している。そして「千年に一度の大地震にも福島原発は耐え得た。その教訓を生かした深層防護の徹底により、日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。発生源である火力発電の代わりに原発を活用し、汚染を減ずることこそが必要だ」と強調している。

 こうした内外の潮流の中で、安倍にとって大きな問題が生じつつある。国連地球温暖化防止サミットで孤立する恐れが出てきたのである。原発推進のはずの安倍政権のエネルギー政策の方向性が定まらないのだ。ここでも公明党ががんになっているのだが、原発の比率を打ち出す電源構成が決められずに先延ばしになっているのだ。電源構成が決められなければ、CO2排出量の削減計画がまとまらない。米国や欧州はもちろん中国までが、サミットでの削減表明に前向きであるのにもかかわらず、安倍だけが発言しようにもその根拠がない、のではどうしようもない。世界第3位の経済大国が、いいかげんな削減計画では済むはずもない。ルーピー鳩山由紀夫が無責任にも「2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で 25%削減する」と“はったり公約”を打ち出したことよりも、もっとまずい状況に陥りかねないのだ。国家百年の計というが、温暖化防止は地球100年の計にほかならない。安倍政権は政権発足当時の原発再稼働への意欲的な姿勢を取り戻さなければならない。
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