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2014-03-16 05:01

(連載2)人民元には脅威、円にはチャンスの 「ビットコイン」

田村 秀男  ジャーナリスト
 13年夏から秋にかけて、中国では高利回りの理財商品の焦げ付き不安が出始めた。すると、中国国内にあるビットコイン取引所は大いににぎわうようになり、世界のビットコイン取引の3分の1を占める最大の市場になった。人民元を売ってビットコインを買い、資産を第三国に移す。ビットコイン相場はみるみるうちに急上昇し、2カ月間で10倍だ。中国でのビットコイン熱は単なる富の逃避では済まされない。何しろ、中国への投機マネー(熱銭)の出入りの規模が大きい。不動産相場が高騰していた2011年秋には年間ベースで3千億ドルの熱銭が外部から流入し、不動産価格が下落に転じた翌年には同2千億ドル以上の資金が国外に流出した。厳しい政府の資本流出入規制をものともせずに熱銭を動かせるのは共産党幹部ら既得権者以外になく、いびつな中国の金融構造は変えようがない。

 理財商品には熱銭が大きくかかわっているうえに、中国国内の預金者が投資している。理財商品で調達された資金の多くは不動産開発に投じられている。不動産バブルが崩壊すれば3兆ドル規模の不良債権が発生しかねない。その不安からビットコインが買われ始めたわけで、ビットコイン熱が高まれば高まるほど、人民元資産が売られて、バブル崩壊を加速しかねない。

 危機感を募らせた中国人民銀行はそこで12月5日、「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」として、金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供の禁止を発表した。金融機関の関与を封じれば、大口の資金逃避は防げると判断したのだ。このショックでビットコイン相場は暴落したが、今年1月に入ると相場は反転した。理財商品の焦げ付き不安が再燃したのだ。そこで中国政府は非公式に介入して理財商品を救済したが、モグラたたきに近い。

 2月に入ると、大手のビットコイン取引所「マウントゴックス」(東京・渋谷)がハッカーによる攻撃を受けて払い戻し停止に追い込まれ、世界のビットコイン愛好者が衝撃を受けた。が、それにもめげず香港では2月末にビットコインの世界初の対面型販売所がオープンした。ビットコイン相場はロシア軍のウクライナ介入を機に、持ち直しつつある。中国当局は次にはどんな手を打つのだろうか。(おわり)
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