国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-11-01 06:59

外交・経済好循環で安倍長期政権確実

杉浦 正章  政治評論家
 フォーブスランキングでロシア大統領・プーチンが1位となったが、世界第3位の経済大国の首相を見逃している。中国国家主席の習近平が3位などとは誰も思わない。同誌編集者は極東情勢の勉強が足りない。掛け値なしで安倍晋三は高ランキングに立つべきである。指導者としての独自のひらめきがある久しぶりの首相だ。奇想天外のアベノミクスの大当たりに加えて、積極的平和主義の「アベノディプロマシー」が好循環のハーモニーを醸しだし、デフレ脱却へと進んでいる。これが世界経済全体に好影響をもたらすことは言うまでもない。その行動力も歴代首相や世界の指導者と比較して抜きん出ている。フォーブスはプーチンのシリア・イニシアチブだけにとらわれ、中国もその“領土の広さ”だけに目を奪われすぎて、安易な判断をしている。まず極東の指導者を見る。安倍と相前後して政権をスタートさせた習近平と韓国大統領・朴槿恵と比較すれば、外交力にせよ、経済判断にせよ、安倍が大きくリードしている。ラストエンペラーという不名誉なニックネームがついた習は、10・28天安門テロでも対応を完全に見誤った。ウイグル自治区を力でねじ伏せようとしているが、事態はモグラ叩きとなるだけであり、必ず倍返しとなって将来政権を直撃するだろう。その外交ぶりにはASEAN首脳会議でも冷たい空気がただよったと言われている。それはそうだろう。力で他国の領土・領海に進出しておいて、南シナ海を念頭においた友好条約を提唱しても、これを信ずる指導者がいるだろうか。訪米でも、対日批判を繰り返したが、オバマに「まず中国側は、日本が米国の同盟国であることを認識する必要がある」と警告されて、事実上失敗した。

 朴槿恵に至っては、訪米で日本の悪口を言いまくり、まるで長屋のおかみさんが隣近所に悪口を言って回るようなはしたなさを見せている。これ見よがしに、中国に大接近しているが、自国の安全保障は大丈夫か。一朝有事の際には中国は北朝鮮支持に回る。このままでは日本は邦人救出しかしない。物心両面の日本の支援なしに、米国と組むだけで北の攻勢に対応できるのか。ニワトリのように目先だけしか読めず、反日だけが売り物の大統領は、やがて国民から見放される。要するに、習も朴もお坊ちゃまとお嬢ちゃまなのであり、政治・外交への判断力の独自性やひらめきに欠ける。これに対して安倍はどうか。たしかに第1次安倍内閣はお坊ちゃま的であったが、第2次内閣は様変わりだ。臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の時を経て、自らの政治姿勢、内政、外交・安保政策に磨きをかけていたことが分かる。これを一気に花咲かせようとして打ち出したアベノミクスが功を奏して、デフレ脱却への希望が見える状態となってきた。上場企業の利益はリーマンショック以来最高の状況となった。休日返上の外交も大きな成果を生み始めた。「アベノディプロマシー」はアベノミクスと車の両輪で展開されている。その基本姿勢も単なる儀礼訪問などではなくて、政治理念に基づき、実利も重視している。

 その狙いは紛れもなく国際世論を日本の味方につけ、中国包囲網を形成する点にある。同時に、日本のデフレ脱却達成への強い連動意識を感じさせるものである。トルコとの原発輸出の成約成功と超難工事であった地下鉄建設の成功は、日本の技術力の高さを中韓両国にはからずも見せつけることになった。とりわけ原発受注競争で中韓両国を退けたことは、重要なポイントだ。原発事故はかえって日本の技術力への信頼を高めているのであって、神経質な汚染水論議などとは「異質」なものだ。経済の振興なくして復興はあり得ないのだ。朝日はさっそく11月1日付の社説で「後の責任が取れるのか」と原発輸出に噛みついているが、逆に問いたい。朝日は地震など念頭にない中国や韓国製の粗悪な原発が世界を席巻する責任を取れるのか。同紙は発想がどうも幼稚だ。安倍は就任後、アラブ首長国連邦(UAE)と原子力協定を結び、サウジアラビアとは締結に向けた協議を開始。インドとの原子力協定に向けた交渉も再開させた。北欧諸国への売り込みにも精を出している。新幹線の売り込みにも前向きだ。池田勇人はドゴールから「トランジスターのセールスマン」と言われたが、安倍は大型インフラのセールスマンだ。この結果1~9月の日本からのインフラ輸出の受注額は5兆400億円で、早くも昨年1年間の1・5倍に膨らんでいる。原発輸出をアベノミクスの推進力と位置づけ計100兆円超の大市場に世界の先頭を切って切り込んでいるのだ。オリンピックの東京招致成功も一連の積極外交のたまものに他ならない。

 翻って歴代首相と比較すれば、ようやく一年交替の悪習から日本の政治が抜け出す流れとなってきたことを物語る。フォーブス調に戦後の日本の首相にランキングをつければ、1位が「吉田茂、岸信介、佐藤栄作、田中角栄」だ。2位が「大平正芳、中曽根康弘、竹下登、小泉純一郎」であろう。3位以下はおおむね1年交替のぼんくら首相である。安倍のランキングは紛れもなく1位のグループに入るものであろう。一方で、民主党の鳩山、菅両政権は、戦後どころか、憲政史上最悪の部類に入る。安倍がこのままデフレ脱却へと結びつければ、戦後の日本中興の祖となりうる。元米国務省日本部長でジョンズ・ホプキンス大教授のラスト・デミングは既に5月の段階で、安倍を「洗練された政治家であり、外交的にも難しい諸懸案にうまく対応している。歴史認識でつまずかなければ、大宰相になる可能性がある」と絶賛している。その通りだ。馬鹿な歴史認識にこだわって中韓両国のプロパガンダに利用されてはならない。今後の政局との関連づけで考えれば、安倍政権は12月26日で1年となるが、衆院選で300議席近くを獲得し、参院選でねじれを解消させた首相が、政権を降ろされることは予見しうる将来ありえない。大汚職が発生したり、過労や病気で倒れない限り、少なくとも2年後となるであろう総選挙までは、継続すると見るのがまっとうな政局判断だ。野党が安倍外交を国会軽視と批判しているが、もっと議席を減らしたいものとみえる。国民の支持がどこにあるかに気付かない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会