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2013-09-11 13:18

「パブロフの犬」と化した米株式市場

田村 秀男  ジャーナリスト
 米株式市場はまるで「パブロフの犬」のようである。市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が供給する量的緩和(QE)資金を食べ続けてリーマン・ショックから回復してきた。QEに慣れてしまった市場は、QEベルに敏感に反応するようになった。バーナンキFRB議長が今後、国債などの資産買い入れ規模を減らすかのような発言をすると、米株価はたちまち下落し、同議長が規模縮小に慎重なメッセージを出すと持ち直す。かと思うと、上向きの米景気指標が出ると、市場は「やはりQEは年内にも縮小に向かう」と受け止め、株価は再び下降気味となる。
 
 景況がいまだに力強さに欠けるから、マーケットはFRB政策に敏感なのだ、との解説がよく聞かれるが、肝心な点を見落としている。他に好材料のなかったリーマン後の米株式市場にとって、QEは唯一無二の強力な餌であり、そのイメージが市場の食欲中枢にしっかりと組み込まれたに違いない。本来、相場とは投資家の予想によって決まるのだから、QEベルの鳴り方が実体景気動向を押しのけてまで、圧倒的な影響力を持つようになったのだ。
 
 もとはといえばFRBとニューヨーク・ウォール街の「示し合わせ」が株式市場をパブロフ犬にしたのではないか。FRBは2010年11月から米国債購入を柱とするQE第2弾に踏み切ったのだが、その2カ月くらい前からニューヨーク連銀と米大手投資銀行が話し合い、金融界に流し込まれたQE資金でS&P500株価指数の構成銘柄を重点的に購入する取り決めがあった、と英国系証券会社の幹部が同年9月27日放映の米CNBCテレビの取材でばらしている。確たる証拠があるわけではないが、その後、FRB幹部はQEをてこにした株価回復に自信を示す発言を繰り返してきた。関係者はQEで株価を押し上げるシナリオを強く意識していただろう。株式版パブロフ犬をQEではなく実体経済という餌に反応させる正常な体質に戻すのは想像以上に難しいことは、最近の株価の推移を見ても明らかだ。よほど強力な景気回復のベルが継続的に鳴り響かないと、その胃袋は反応しそうにない。しかも、外からは中国の「影の銀行問題」などの雑音も大きくなっている。
 
 「異次元緩和」の日本にとっての教訓は何だろうか。まずは、金融政策への過度の期待や依存は慎むことだ。もとより日本の場合、実体経済は株価に影響される度合いが米国よりはるかに少ない。量的緩和は円安を呼び、株高につながってきたのだが、だからといって、脱デフレが短期間で実現するわけではない。株式市場が米国のようにQE依存症になって、なおデフレが続くという最悪の事態になりかねない。財政政策が金融政策と並んで重要である。安倍晋三首相がデフレ圧力を高める消費増税の実施延期や税率緩和を考えるのは当然のことだ。
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