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2013-06-28 06:26

昭恵は「原発反対」を言わなければ最高の援軍

杉浦 正章  政治評論家
 自民党選対関係者と飲んだら「あれさえ言ってくれなければ、最高のキャラクターなんだが」と漏らしていた。「あれ」とは首相・安倍晋三夫人の昭恵の「原発反対」発言だ。たしかに昭恵の言動を観察すればするほど、首相夫人として実に見事な球を投げている。歴代首相夫人の「最高峰」は佐藤栄作夫人の寛子と三木武夫夫人の睦子と言えるが、それに勝るとも劣らない「積極派内助の功」を感じさせる。抑えた知性の高さを感ずるのはフェイスブック(FB)だ。連日何らかの発信をしているが、安倍のようにあからさまに田中均を批判してひんしゅくをかうようなこともない。極めて安定感のある書きっぷりだ。それでいてPR効果は十分に出ている。例えば安倍の問責決議が可決された6月26日は、「生きていると日々色々なことがある。いいことも、やなことも・・・ やなことをどうとらえるかで人生は変わる・・・と思う。と思おうとしています・・・」と書いている。問責のもの字も書いていないし、野党の馬鹿さ加減にも触れていないが、余りの愚劣な決議に対する憤りは伝わる。<妻の手を借りてバランスとる総理>と安倍が朝日川柳でからかわれている。

 昭恵が安倍の諸外国への原発売り込みに関連して「原発反対」を明言したからだ。さる6日、昭恵は国会内で講演し、安倍が世界各国に日本の原発輸出を図っていることに対し、「私は原発反対なので、非常に心が痛むところがある」と述べた。首相夫人が政権の方針と異なる意見を公の場で語ったことは今までに知らない。原発再稼働阻止の朝日が、やんやの喝采をしたのは言うまでもない。その意図については確かにバランスを取ろうとしたと解釈できないこともない。しかし、良家に育った子女は物怖じしないから、率直な物言いをする。寛子も睦子もそうだった。鉄道省時代に佐藤が帰宅して「腹が減った」というと「蠅帳(はいちょう)にらっきょうがあるから自分で食べてください」。佐藤は渋々らっきょうをおかずにご飯を食べたという。

 昨年95歳で亡くなった睦子が三木の政治によく口を出したのも有名だ。バリバリの護憲派で三木以上に左がかっていた。菅直人夫人の伸子も政局の節目で夫の決断を後押しし、歯に衣(きぬ)着せぬ発言から、菅に「家庭内野党」と呼ばれた。悪名高き原発事故での対応ですら弁護している。昭恵も「私は家庭内野党」と述べている。昭恵の原発反対は、朝日やNHKの報道に見られるぎすぎすしたイデオロギー的な色彩はない。むしろインテリで中産階級の主婦らが陥りがちな「空想的理想主義」の側面が濃厚だ。現段階において原発が国のエネルギー政策の死命を制するものであることなどには理解が及ばない。それより「福島が可哀想」という発想だ。福島も、国が繁栄しなければ復興できないことまでは考えが行き届かないのだ。昭恵が、ぎすぎすの反対ではないことは他の発言でも分かる。日経のインタビューで昭恵は「政策に口を出すつもりは全然ないです。ただ福島県富岡町に行って、全く人のいない様子を見て、そこに住んでいた子どもやお年寄りのご意見を聞いたならば『代替エネルギーがあればリスクのある原発から変えた方がいい』と誰もが思うのではないでしょうか」と述べている。原点は「福島が可哀想」なのだ。

 月刊「歴史通」で原子核物理学者・有馬朗人と対談している。有馬が福島での年間1ミリシーベルトの過剰防護を指摘して「日本人は太陽や星からくる放射能や大地や食物からの放射能を平均1年間1.5ミリシーベルト受けている。除染目標は1ミリシーベルトでは低すぎる。50ミリシーベルトで十分」と主張した。これに昭恵は「湯治のためにラジウム温泉に行く人もいますしね。ちなみに、私はラジウム鉱石の入った枕を使って寝ているので、うちの寝室はすごく線量が高いと思います(笑)」と答え、同調している。しかし、参院選挙では野党が、半年前に総選挙で同じ主張をして大敗北したことも忘れて、脱原発や反原発で戦おうとしている。首相官邸前の不愉快極まりない抗議運動レベルのキャンペーンで盛り上げようとしている。昭恵は弁も立つし、6年前の参院選挙でも首相・安倍を助けて、全国を飛び回った。その昭恵が「原発反対」を唱えてしまったら、野党が好餌とばかりに飛び付くのは目に見えている。「私は家庭内野党。周囲の人は嫌なことは、だんだん権力を持つと言えなくなる」と述べているが、死活問題のエネルギー政策だけは別だ。「原発反対」なしの応援を自民党選対は頼み込まなければなるまい。安倍と昭恵の関係について、昭恵は「私が『暴れるかもしれない』と言うと、『あまり暴れないでね』と言っていた」という感じらしい。要するに、昭恵が上位にあるので、安倍からの説得も、国会原稿風に書くと、難航するものとみられる。
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