国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-06-24 11:27

デフレ圧力下の消費増税は必ず失敗する

田村 秀男  ジャーナリスト
 来年4月の消費税率引き上げに予定通り踏み切るべきかどうか、安倍晋三首相の周辺では議論が分かれている。「予定通りの実行」派と、少なくとも1年は実施を延期し2015年以降に一挙に10%に引き上げればよい、とする向きに二分されている。「延期派」は、アベノミクスによってせっかく脱デフレと景気の本格回復の道筋が見え始めたのに、増税すれば、個人消費が冷え込み、デフレ圧力を招き入れてしまうと恐れる。産経新聞コラムなどで2カ月以上前から「消費増税はアベノミクスを潰す」と警告してきた筆者に同調する。

 「このまま増税」とする首相周辺も景気やアベノミクス効果への悪影響を懸念しながらも、「政治的には延期は無理」と打ち明ける。増税延期ともなれば、自民党内の増税推進派が騒ぎ出し、党内の結束が乱れ、ひいては安倍首相の党内基盤が弱くなるというわけである。何が何でも増税をめざす財務省の幹部は「増税延期となると、日本が財政再建に消極的と海外の投資家から不信を買い、国債相場が暴落しかねない」と説得に躍起となっている。増税推進派議員やメディアの多数はこの論理を真に受けているので、始末が悪い。

 消費増税すれば財政再建の道筋が見えるのだろうか。筆者は以前からデフレ圧力が根強い中での消費増税はデフレの進行を加速し、経済のパイを萎縮させ、現役世代を苦しめるばかりか、消費税、所得税、法人税の基幹税収総額を減らす結果、財政収支が悪化すると指摘してきた。1997年度の消費税率引き上げ(3%から5%)の後に起きたのが「15年デフレ」と税収の大幅減だった。筆者の指摘については、浜田宏一内閣参与(エール大学教授)も同意する見解を何度も明らかにしている。財務官僚の意のままに消費増税を推奨してきた御用学者の多くはこの事実を無視するばかりか、消費増税のデフレ効果、税収減効果を直視しようともしない。メディアは当然のごとく御用学者に追随する。

 英国は11年1月から付加価値税(消費税に相当)率を17・5%から20%に引き上げたが、一挙にデフレ圧力が高まった。12年夏にはロンドン五輪が開かれたが、消費は減退したままだ。消費者物価は増税に伴い11年に4%台、12年からは2%台で推移しているが、名目国内総生産(GDP)の伸び率を上回り、11年以降は実質マイナス成長に陥った。所得税と法人税などを含む税収総額は12年9月以降前年比マイナスに落ち込んだ。ことしはさらに悪化し所得税、法人税収とも前年比減、付加価値税収も実質では前年比減収である。発券銀行のイングランド銀行はあわてて資金発行量(マネタリーベース)を猛烈な勢いで増やしているが、この量的緩和の効き目は消し飛んだ。増税派は英国の惨状を直視すべきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会