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2013-05-22 06:03

橋下の自爆で“自公過半数”確定的

杉浦 正章  政治評論家
 選挙で相手の信用を失わせることで自分を相対的に高めることをネガティブ・キャンペーンというが、維新共同代表・橋下徹はこれを自らの党維新に向けて行う方向となった。まさに自爆テロならぬ、自爆選挙が参院選に向けて展開される。「慰安婦有用論と米軍慰安婦活用論」を撤回するどころか、開き直って今後も主張し続けるのだ。この結果参院選の動向は、自公両党が固く見積もっても過半数に達して、ねじれを解消できる見通しとなった。逆に維新の低迷で改憲勢力で3分の2議席への到達は、先に指摘した「微妙」から「困難」となろうが、いずれにしても民主党の改憲グループが鍵を握っており、首相・安倍晋三にとっては、その取り込みが鍵となる事に変わりはない。橋下はイメージがアドルフ・ヒトラーと常にダブルが、今回の発言にともなって展開している「慰安婦各国共通論」は、まさにヒトラーが第1次大戦で意気消沈したドイツ国民を鼓舞激励して、国粋主義勢力を拡大した手法とそっくりである。しかし、橋下は生まれるのが遅かった。「慰安婦は世界中同じだった」と主張しても、これでナショナリズムが沸き立つことはない。まさに「チャップリンのヒトラー」的な喜劇の主役を演じているに過ぎない。

 この現実に気付いたとみえて、みんなの党代表渡辺喜美が状況を「フル活用」して、維新を切った。幹事長江田憲司のペースで進められてきた選挙協力を破棄したのだ。これにより第三極は共食い状態に陥るが、橋下の“ネガティブ・キャンペーン”で維新が決定的に不利な立場となる。参院選までちょうど2か月となったが、区割り法案が5月23日に衆院を通過、成立は確実な情勢であり、ダブル選の可能性はますます遠のいた。各党とも参院選、都議選に突入する。2か月間という期間は、普通なら発言を撤回して陳謝すれば、マスコミはおさまる期間だ。ところが橋下は“確信犯”であり、持論の展開をやめようとはしない。24日には慰安婦との会談が予定されているが、こうしたケースも活用するだろう。6月に訪米が予定されているが、恐らくテレビは一挙手一投足を放送しようとするだろう。まさに橋下のネガティブ・キャンペーンをいさめることのできない維新は、逆風の中で断末魔というか、地獄というか、そうした選挙に直面せざるを得ない。

 このみんなの維新切りで選挙の構図ががらりと変わる。自公圧勝の構図はますます強まる。「自民60議席前後、公明11議席程度で、非改選と合わせて122の過半数を突破し、130議席前後に迫る」とみた流れは、もっと増える公算がある。なぜなら、自民党が2議席を擁立した東京、千葉で全員当選の可能性が生じているからだ。もちろん1人区で自民党圧勝の構図はまず変わらない。みんなと維新は選挙協力ですみ分けた、千葉、埼玉、愛知で独自候補を立てようとしており、共食いの構図だ。民主党は野党第1党から転落かと見られていたが、2人区で1議席を獲得できる可能性が強まったと言えよう。維新は10議席台後半の議席は可能と予想されたが、10議席に届くまい。維新票はもともと保守票であり、民主党には流れまい。やはり自民党が有利であろう。しかし第3極の分裂は、民主党に“おこぼれ”効果をもたらす可能性がある。みんなとの選挙協力が実現するかどうかがカギでもある。

 ただ162の改憲議席を改憲政党全体で獲得できるかどうかは、維新の自爆選挙で一段と難しくなったことは否めまい。安倍としては、もともと改憲勢力の確保は民主党の改憲派も意識していたことであり、選挙後は3分の2確保で参院民主党にくさびを打ち込んで行くことになろう。政府・自民党は、橋下発言に閣僚や党幹部が同調しないように、懸命の箝(かん)口令を敷いている。橋下が「安倍政権の中にいる保守系閣僚は何も言わなくなった」と歯ぎしりしているとおり、同調しては火の粉が自民党にかかることを十分に意識しているのだ。橋下と親しかった安倍も「私も、自民党も、全く立場が異なる」と突き放し始めた。安倍は、幹事長石破茂とともに「遊説3本の矢」とされている青年局長・小泉進次郞も、いくらテレビがけしかけても「ノーコメント」で押し通している。小泉32歳、橋下43歳といずれも若いが、小泉の方が圧倒的に政治家として成長している。橋下はもともと政治家に不適任であったが、もうダメだ。終わった。
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