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2013-05-21 19:05

(連載)日本こそアメリカとアジアを守る防壁である(1)

河村 洋  外交評論家
 中国の拡張主義的な野心と北朝鮮の核瀬戸際政策は東アジアの緊張を高めている。特に、中国への対処には綱渡り外交が求められる。中国とは安全保障での協調と経済関係を模索する一方で、アメリカもアジア太平洋諸国もこの国の危険性をしっかり認識しておかねばならない。強い日本は中国に対する防壁となり、それは北京政府と対話になっても対決になっても域内の国々の利益となるであろう。問題はオバマ政権のアジア重視政策がただの文言に過ぎず、中東でのアメリカの特別な役割を放棄しているかのように思われることである。それが超大国の自殺行為にもつながりかねない。

 現在のアメリカの東アジア政策は、日中間の地政学的な競合を超えたグローバルな文脈から理解されるべきである。中東でのアメリカの役割を支持する者は、中国の拡張主義にも毅然と立ち向かっている。財政支出強制停止に見られるように、アメリカ国内で孤立主義が高まる時代にあって、このことは銘記さるべきである。アメリカとアジア太平洋諸国が、強い日本を必要とするのはなぜか?ジョセフ・リーバーマン元上院議員の政策スタッフであったバンス・サーチャック氏は4月19日付けの『ワシントン・ポスト』紙で、その理由を述べている。リーバーマン氏は、ジョン・カイル元上院議員と共に4月25日付けの『ワシントン・ポスト』紙に孤立主義に反対する論文を寄稿し、アメリカン・エンタープライズ研究所には「アメリカ国際主義プロジェクト」を設立している。よってサーチャック氏の政策分析はオバマ政権のアジア政策を批判的に見つめ、アメリカとアジア太平洋同盟諸国にとっての日本の戦略的重要性を評定するうえで示唆に富む。

 そこで、東アジアと日中競合に関するサーチャック氏の見解に触れたい。地域安全保障に関しては、アメリカが北朝鮮の核の脅威への対処で中国の協力を要請することもあるだろう。しかし「中国は必ずしも核不拡散について国際社会と重要な利害を共有しているとは言えず、むしろ北朝鮮の体制崩壊を懸念している有様である。また、中国のサイバー攻撃の脅威と海洋拡張主義はきわめて大きな懸念材料である。日本は、そのような脅威に直面する国々にとって安全保障上の信頼できるパートナーになる大きな可能性を秘めている。日本の防衛支出はGDPの1%に過ぎないが、その軍事能力はアジアでも最も高度な部類に属する。さらにアジアでの緊張の高まりを受けて安倍政権は安全保障上の役割分担に積極的だ」とも指摘している。

 オバマ政権は、こうした議論を理解しているのだろうか?先のジョン・ケリー国務長官による東アジア訪問に関して、外交政策イニシアチブのクリストファー・グリフィン副所長とロバート・ザラテ政策部長が、4月18日付け『ディプロマット・マガジン』誌に寄稿した連名論文に言及したい。両人は、ケリー長官が中国の無謀な侵入の際には日本とアジアのシーレーンを防衛すると明言したことは高く評価している。しかし8人の共和党上院議員が4月12日付けでケリー氏に書簡を送り、中国の危険な冒険主義と日本の戦略的重要性への注意を促したことにも言及している。この書簡にはマルコ・ルビオ上院議員、ジョン・コーニン上院議員、ジェームズ・インホフ上院議員、ジェームズ・リッシュ上院議員、ケリー・エイオット上院議員、ロバート・コーカー上院議員、ジョン・バラッソ上院議員、サクスビー・チャンブリス上院議員、そしてジョン・マケイン上院議員が署名した。(つづく)

 
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