国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-04-26 06:19

「円安空襲」が韓国経済を直撃

杉浦 正章  政治評論家
 韓国副首相・玄オ錫(ヒョン・オソク)が、よほどこたえているのであろうか、「円安は北朝鮮の威嚇より、より大きな韓国経済の障害物だ」と述べるに至った。韓国メディアは「無制限の円安空襲」「円安は沈黙の殺人者」と大反発。まさに北の威嚇以上に円安が韓国を直撃しているのだ。しかし首相・安倍晋三は何も韓国狙い撃ちでアベノミクスを展開しているわけではない。自国のデフレ対策をしているだけだ。これまで超円高で対日貿易戦争を半額セール、3割引セールで一人勝ちし続けた輸出一辺倒の韓国経済が、自分のまいた種によって失速寸前の危機に直面しているだけだ。韓国は旧態依然の靖国参拝批判で対日関係を悪化させることが、自らの経済危機の打開にマイナス効果だけをもたらすことを知るべきだ。韓国は円安が自らの経済に及ぼす影響を恐れ、あらゆる国際会議の場などで執拗に「アベノミクスは円安誘導」と主張して、国際社会の同調を得ようとしてきた。しかし、ワシントンで4月18日から19日に開かれた主要20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、日本の円安政策を公認した。会議後に発表された共同合意文は、日本の量的緩和政策を「デフレを脱却し、内需を支持するためのもの」と評価した。韓国の受けた打撃は相当なものがあったことは言うまでもない。中央日報は「日本だけが笑った」「無制限の円安空襲」と形容し、「これで日本は2015年まで思い切り金融緩和ができるようになった」と、お手上げの論調を展開するに至った。

 韓国経済は過去20年間日本製品をコピーした家電、自動車などの輸出に支えられ急成長してきた。2008年のリーマンショック後は日本の円高に支えられ、とりわけ民主党政権と白川方明のなすすべを知らない超円高放置策で潤い続けて来た。それはそうだろう。同じものを作れば世界の消費者は安い方を買う。円高は、韓国が3割から5割引きセールを世界市場で展開しているのと同じであった。「ウォン安円高」は韓国の株価を引き上げ、日本の株価を下げるという方程式が出来上がって、これに100%依存する構造となっていたのだ。外国人投資家も「韓国売り日本買い」に転じた。韓国政府の一貫した輸出偏重政策は、輸出依存度をどんどん上昇させ、実質GDPに占める輸出の割合は52.7%にまで至った。同じ輸出立国の日本が15.6%だからその異常さが分かる。ところがアベノミクスが、この韓国経済を直撃した。輸出産業が一番恐れていたウォン高に至ったのだ。対ウォン相場が30%も円安となって、日本側は家電も自動車も一挙に息を吹き返す流れとなった。韓国内では「30年代の世界恐慌並みの事態が到来」とメディアが報ずるに至っている。しかし世界経済がアベノミクスで恐慌の事態に至ったとは聞いたことがない。韓国経済だけが過去20年間に味わったことのない大不況に陥る恐れが出てきたのだ。

 「隣の不幸は鴨の味」などと不遜なことを言ってはいけない。しかし、外交はあらゆる要素を勘案して展開される。大統領・朴槿恵は就任早々北の威嚇と円安という二重苦に直面したことになる。おりから閣僚が3人靖国を参拝したくらいで「日韓関係は歴史認識が正しく認識されることが前提にならない限り、過去の傷が悪化して未来志向になりがたい」と反発しているが、大統領が代わる度に国内世論にこびて「歴史認識」を持ち出すのは、もうやめた方がいい。韓国外務省報道官は25日「加害者として、過ちをはっきりと認識し、行動することが必要だ」と批判したが、戦後70年もたって日本国内の“加害者”はもう皆死んでしまっていない。残る日本国民は世界に冠たる平和愛好主義者ばかりである。はっきり言ってもう時効もいいところであり、なんの罪もない入れ替わった世代に理不尽な非難を繰り返しても、ぬかに釘であることを理解すべきだ。

 さらに韓国は日本の靖国参拝のステージが大きく変化したことを知らなければならない。尖閣、竹島の領有権を巡る中韓両国の動きが刺激となって、“靖国参拝容認”の空気が国民の間で横溢しているのだ。安倍の「国のために尊い命を落としたご英霊に尊崇の念をあらわすことは当たり前のこと」という主張が、中国による領海、領空侵犯と戦う自衛隊と海保の国防努力と重ね合わされるようになったのだ。国民の胸にかってなく響くのだ。事実、防衛省筋は、「靖国参拝の首相の姿勢は、自衛隊員にとって心強い」と漏らしている。安倍が一歩も退かない理由はここにもあるのだ。そこで韓国の円安経済危機に戻るが、過去において日本はたびたび韓国の経済危機を救っている。人が良い国民性だから助けたことはすぐに忘れるが、1997年のアジア通貨危機では経済崩壊寸前に至った韓国の借金返済で、各国金融機関を説得して崩壊を救った。2005年には日韓通貨スワップ協定を締結、通貨危機を救う約束をした。リーマンショックのときもスワップ協定の限度額を2兆円にまで引き上げて、ウォン暴落を未然に食い止めた。しかし、今回も救いの手が自動的に差し出されるとでも思っているのなら、韓国は甘い。反日感情を露わにしながら「助けてくれ」といわれても、助けようがない。いいかげんに靖国での内政干渉をやめ、「歴史認識」などは研究者に任せて、真の未来志向の関係を打ち立てるべきだ。安倍は譲歩する必要はない。デフレ脱却と円安維持に専念すべきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会