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2013-02-02 12:49

(連載)領土問題は無差別的国際法主義で解決せよ(1)

山下 英次  大阪市立大学名誉教授
 日本は、戦後、3分の2世紀を経た今日も、近隣諸国と国境を巡る論争をいくつも抱えている。このような国は、もはや世界的にも余り例はない。尖閣諸島を巡る日中関係、竹島をめぐる日韓関係は、容易ならざる事態に陥っており、このまま長引けば、わが国の国益が中長期的に非常に大きな悪影響を蒙ることが大変懸念される。

 中国や韓国は、このところメディア戦略や各種の政治的な働きかけ等を通じて国際的な宣伝活動を非常に活発化させている一方、現状ではわが国は受け身に立たされている。受け身の姿勢をとり続けることも、解決を長引かせることもよろしくない。竹島も、尖閣諸島も、北方領土についても、議論による説得も、交渉による解決も見通せない状況にある。この際、わが国は、領土問題については、無差別主義と国際法主義を貫くとの姿勢を、国際社会に向けて示すことによって攻勢に転じるべきではないだろうか。

 すなわち、中韓露3国を無差別に扱い、竹島、尖閣諸島、北方領土のすべてについて、国際司法裁判所(ICJ、本部=オランダ・ハーグ)の判断に委ねる方針であることを、世界に向けて示すということである。韓国だけを、竹島についてICJに単独提訴するとすれば、韓国から差別的扱いではないかと主張する口実を与えることにもなる。わが国は、国境問題について、すべての相手国を無差別に扱い、国際法に委ねるという原則を示す方が得策ではないだろうか。そした姿勢を示すことによって、この問題に対するわが国の自信と公明正大さを国際社会に示すことができるであろう。

 とはいえ、日本は、ICJの強制(裁判)管轄権(compulsory jurisdiction)を受諾しているが、中韓露3カ国はいずれもこれを受諾していないため、わが国が仮に単独提訴したとても、実際には、ICJでの審理が直ちに進むわけではない。しかし、わが国のICJでの紛争解決の呼びかけに、相手国が応じないとすれば、それは当該国の自信のなさを国際社会に印象付けることができる。これは、PR戦略としても極めて有効であろう。(つづく)
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