国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百家争鳴」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-01-14 13:15

「日銀式緩和」が日本再生を不可能にする

田村 秀男  ジャーナリスト
 一国の経済はまるで人生のようで、チャンスが到来したときに、それをつかみ損ねると幸運の女神から突き放される。その女神を引きつけられるのは主としてときの政権である。民主党前政権の場合、財務・日銀官僚の言いなりのまま、増税に次ぐ増税と偽の金融緩和でデフレ・円高をさらに進行させ、衆院総選挙で壊滅した。26日に発足した第2次安倍晋三政権はその点、ツイている。民主党の無策にあきれ果てていた市場と有権者が安倍氏の金融政策大転換論に期待を寄せ、円相場も株価も好反応する。米景気の回復基調が鮮明になったおかげで世界経済不安が和らいでいる。世界の景気と同調する形で、日本が有効な脱デフレ・円高是正策を打てば、日本の景気は予想を上回る速度で上昇軌道に乗るかもしれないのだ。

 この絶好のチャンスを生かせるかどうかは、安倍政権の判断力次第だが、まずは、官僚のウソを見破る識見が試される。まずは日銀の金融政策だが、安倍氏による「大胆な金融緩和政策への転換」圧力作戦が功を奏しているかのように見える。白川方明日銀総裁は20日の金融政策決定会合で安倍氏の要請に応じて2%のインフレ目標設定に向け、2013年1月中に結論を出すと確約したからだ。安倍氏はさらに「日銀がインフレ目標に応じない場合、日銀法を改正する」と畳みかけた。

 だが、安心してはいけない。まず、インフレ目標を設定したところで、その達成のために日銀がどんな金融政策を打ち出すか、その中身といえば、効果に疑問のある日銀式緩和である。長期国債を大量に購入してお札を継続的に金融市場に流し込むまともな「量的緩和」を日銀は否定し続け、代わりに「包括緩和」というその場しのぎの小出し緩和を続けてきたが効果はゼロ。すると日銀は20日の会合で、金融機関の融資増加分について日銀が0.1%の低利資金でまるまる補填する制度を設けた。つまり、銀行は労せずして日銀が刷るおカネをいくらでも入手できる。

 ならば、住宅ローンも対象になるのだから住宅ローン金利を0.1%近傍まで下げてくれれば助かる、と思う向きもいるだろうが、どっこい銀行の住宅ローン金利は従来通りで、0.1%に1%以上が上乗せされる。一般の消費者には何の恩恵もなく、銀行は大もうけだ。おまけに、この日銀資金は外銀やヘッジファンドにも供給される。ヘッジファンドは0.1%の資金を海外に持ち出して米株式など金融商品を買って運用して大いに利益を稼ぐ。この間に円が売られるので、円安効果が見込めるというのが、日銀の説明だが、円投機ファンドに日銀がその軍資金を流すトンデモない話である。ヘッジファンドは円を売ってもうけ、今度は安くなった円を買ってもうける強欲ぶりで、円相場は不安定になるだけだ。安倍政権は日銀の亡国緩和方式を撤回させ、正当な量的緩和方式への転換を迫るべきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『百家争鳴』から他のe-論壇『百花斉放』または『議論百出』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
東アジア共同体評議会