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2012-12-04 15:45

陰謀説が渦巻くCIA長官の辞任劇

川上 高司  拓殖大学教授
 オバマ大統領の再選が決まってウキウキした気分が抜け切れない11月9日、ワシントンに激震が走った。イラク、アフガニスタンの司令官、CENTCOM司令官として数々の業績を積み上げたデビッド・ペトレイアスCIA長官が突然辞任したのだ。理由は「個人的なこと」と本人はコメントしたが、メディアでは「不倫疑惑」が原因ではないかと連日ヘッドラインを賑わしている。だが問題が議会や、9月11日リビアで起こったスティーブンソン大使殺害事件にまで及ぶとなると、「機密漏洩疑惑」や「陰謀説」までがささやかれている。

 CIA長官は自伝の執筆を担当していたパウラ・ブロードウエルと親密な関係にあったというのが「不倫疑惑」である。これは、ジル・ケリーという女性が、ブロードウエルから嫌がらせのメールを受けたことを知り合いのFBI捜査官に相談したことから発覚した。この捜査官はフレデリック・ハンフライズという人物で、彼を知る人物によればハンフライズは「がんばりすぎて暴走しがちなところがある」らしい。元FBI捜査官によれば、だたの嫌がらせメールでFBIが捜査をするということは異例中の異例このとだという。そのうえFBI長官はCIA長官の疑惑についてはすでに10月中には知っていたのに大統領選挙が終わるまで伏せていて、選挙当日に情報長官に疑惑と調査の件を伝えたということも謎である。

 一方のブロードウエイはデンバー大学での講演会の席で、「スティーブン大使事件ではベンザジの武装勢力は領事館を狙ったのではなくCIAの隠れ家を狙っていたのだ、当時CIAの隠れ家には彼らの仲間が拘束されていてその奪還のために襲撃したのだ」と発言した。CIAはこの件を否定しているし真実は闇の中である。だが、ブロードウエイのパソコンはさまざまな国家機密に関わる情報が残されていたらしく、CIA長官との関係を考えればあながちでたらめとも言えない。むしろCIA長官が機密情報を彼女に漏らしたと考えるほうが自然であろう。CIA長官に「機密情報漏洩疑惑」がかかっているのはこのためだ。もしこの機密が事実だったとしたら、大使襲撃事件はまったく違ったものとなる。武装勢力はイスラム過激派とは無関係となりCIAが大使の死に大きくかかわっていたことになる。

 ペトレイアス長官は15日、上院・下院の情報委員会に召喚されていて非公開で証言会が開かれる予定だった。その席でスティーブンソン大使殺害事件の件で証言するはずだった。CIA長官は10月末にリビアを訪れて事件を調査していて、トリポリの支局長に「個人的に」聞き込みを行って議会への報告をまとめようとしていた。だが、本人の辞任によってこの報告は代行のマイケル・モランが行うことになりそうである。誰かが議会でのペトレイアスの証言を阻むために辞任に追い込んだ、そんな「陰謀説」がまことしやかに流れている。CIA長官から始まった疑惑はジョン・アレン海兵隊司令官や司法長官のエリック・ホルダーにまで飛び火して拡大しつつある。オバマ大統領の2期目の出鼻をくじくことにならないといいのだが、この「陰謀説」は当分収まりそうにないようである。
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