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2012-10-22 09:40

(連載)ウィキリークスは情報の義賊(2)

山下 英次  大阪市立大学名誉教授
 ジュリアン・アサンジ氏は、友人にしたいような人物ではなさそうだが、ウィキリークスがやってきたことは、基本的には、情報を持ち秘匿するごく一部の者から、情報を持たない大多数の者へ、機密情報を国際的に移転したということである。その意味で、ウィキリークスは、情報の国際的な義賊(ロビン・フッド)といって差し支えないのではないだろうか。世界には、不正があふれており、内部告発サイトの存在は、国際社会全体にとって非常に有意義である。実際、ウィキリークスは、これまで、英『エコノミスト』誌の表現の自由賞(2008年)、アムメスティ・インターナショナルの国際メディア賞(2009年)、米サム・アダムズ賞(2010年)、豪州のピューリッツアー賞と呼ばれるウォークレイ基金ジャーナリズム貢献最優秀賞(2011年11月)など、数々の受賞歴もある。

 日本についても、2010年11月以降、米国の外交公電がウィキリークスによって順次リークされた一環として、在沖縄海兵隊のグアム移転経費の日本側負担について、密約がなされていたことが判明している。他にも、これまで、日本政府は、沖縄返還に伴う密約、核持ち込み密約等々、米国との間で自国民に知らせたくない合意を秘密裏に結んできたことが繰り返し明らかになっている。さらに例えば、米軍駐留経費の日本側負担(いわゆる「思いやり予算」)は、実際には、公表をかなり上回る額に達していると言われている。日本国民にとっても、内部告発サイトの存在は、非常に有益なのである。

 機密情報を漏洩した公務員が、不幸にして特定されたとすれば、法律上罪に問われるであろうが、そうした情報を入手し、公開した告発サイトやそれに協力しいたメディアが訴追される謂れはないはずである。かつて、ウィキリークスのナンバー2であったドイツ人のダニエル・ドムシャイト=ベルクは、運営方法を巡り対立し、2010年9月、アサンジと対立し袂を分かった。

 ドムシャイト=ベルクは、著書『ウィキリークスの内幕』(文芸春秋、2011年3月)の中で、ウィキリークスに居た頃、彼らは常々、「歴史の正しい記録のみが、世界を理解することを可能にする」と言っていたと述べている。ドムシャイト=ベルクらは、中立性や情報源の秘匿などの点でウィキリークスには問題があったとして、2010年末から、新たな告発サイト「オープン・リークス」(OpenWeaks)を立ち上げ、運営している。(おわり)
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