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2012-08-31 01:19

(連載)海上保安庁の「ビデオ公開」を嗤う(3)

鹿又 勝己  会社員
 そうでなかったとすれば、それは「けが人を出さないという政府方針を絶対遵守せよ」と、組織上層部から現場に下命されていたからに他ならない。日経の記事は公開されたビデオについてこうも書いている。「抗議船の活動家の肉声や接舷した巡視船をすり抜けた場面なども映っていなかった。同庁の奥島高弘領海警備対策官は「今後の業務に支障のないよう、追い込み方や陣形など警備手法が分かるような部分はカットした。今後も公開する予定はない」と説明している。

 奥島領海警備対策官は「共同体」の仲間とみた、記者クラブでいつも顔を見合わせている記者に気を緩め、つい本音を語ってしまったと見える。制圧に失敗して、上陸されてしまっているのに、「今後の業務に支障のないように」というのは、「今回の業務は成功した」と言っているとしか考えられない。ジョークか?ちがう。海上保安庁が官僚「共同体」の一員として日本外務省の方針に沿って行動したのだとすれば、「成功した」と強弁できないこともない。世界中から嗤われたが、「けが人は出ていない」のだし、大型巡視船の建造予算は確保できたのだ。

 小生は当初、香港人活動家一行を簡単に上陸させたのは、「作戦」であると考えていた。直ちに不法上陸で逮捕し、即送還するが、この騒動を口実とし、魚釣島あたりに太陽光発電設備を備えた無人監視哨を設置したり、ヘリポートの拡充に着手する口実をつくるために、わざと上陸させたと考えていた。これはごく常識的な想像だ。

 ところが、どうやらそんなことはハナから考えられていなかったらしい。尖閣諸島を紛争地域だと演出できて、北京政府は大喜び。そして彼らに雇われた香港人活動家が「10月にまた行くぜ」と嘯いているのに、日本政府は立ち竦んでいる。国家がいかに嘲笑されようが、領土・領海が脅かされようが、予算獲得さえうまくいけば、それでいいのだ。長期的に国民・納税者がどんな災いに見舞われようが、官僚「共同体」の組織利益さえ護れれば、「そんなもの知ったことではない」のだ。原発開発にも共通する、惨たる日本の現実だ。(おわり)
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