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2012-08-26 00:22

オバマ陣営が諸手を挙げて歓迎する共和党副大統領候補

川上 高司  拓殖大学教授
 2012年の大統領選挙で唯一空席だった共和党副大統領候補の指名が発表された。ロムニーは、下院予算委員会委員長のポール・ライアンを指名、ライアンは42歳でウイスコンシン州で生まれ育った保守派のアメリカ人である。ライアンの指名は、ロムニーがいかに外交問題よりも財政問題を重視しているかを物語っている。ロムニーには外交政策の経験がない。過去を振り返れば外交に疎い大統領は副大統領にベテランを指名して補完してきた。オバマは、自分より年上でベテランのバイデンを副大統領に指名したし、ブッシュ前大統領は超ベテランのチェイニーを副大統領に据えた。もっともチェイニーはあまりにもベテランすぎて「陰の大統領」とも言われていたほどだ。

 ライアンにもロムニー同様外交政策の経験がない。要するに共和党の正副大統領候補はいずれも外交政策に疎いということだ。となれば、国務長官や国防長官の存在感が高まるか、国家安全保障会議や外交アドバイザーたちの発言権が強まる可能性が高い。そうなれば前ブッシュ大統領がネオコンに振り回されたようにロムニーもまたネオコンや強硬派に振り回されることもあり得る。ライアンはそもそもアメリカの「例外主義」とアメリカのスーパーパワーを信奉している。アメリカこそが「自由の国」のお手本であり特別な国なのである。そして世界の秩序を守り卓越した国家であるというのが彼の基本姿勢である。この考え方はまさにネオコンであるが、一方で中国やロシアに関しては柔軟な姿勢も見せる。これらの国がより民主化されれば共存共栄は可能だというのだ。

 財政面では厳しい。医療保険制度に対しては歳出を可能な限り抑えて財政の立て直しを図るつもりである。一方でアメリカのスーパーパワー維持のために国防費の削減には反対している。予算委員会委員長の経験を活かした財政再建には期待がかかる。しかしオバマ陣営からは歓迎の声が聞こえてくる。医療費の削減など高齢者に厳しい政策を打ち出すことで、オバマ支持が弱いと言われている高齢者の票が民主党へ流れる可能性があるからだ。特に高齢者票が多い激戦区のフロリダ州での票の動きによって勝敗が決する可能性が高いだけに、この人選はまさにオバマ陣営にとっては願ってもない展開であろう。しかもロムニーはもともとヒスパニック系には不人気だが、ライアン指名によってヒスパニック票がロムニーに向かう可能性はほとんどない。

 現時点ではオバマがロムニーを支持率で上回っている。このままなにごともなく過ぎればおそらくオバマが再選されるだろう。シリア情勢は不穏な状態が続きヨーロッパの金融危機もまだ収束していない。イランの核開発問題も解決していない。国内経済も良好とは言い難い。問題は山積みだが、ライアンの指名でオバマ政権には余裕が生まれたに違いない。大統領選挙はますます退屈になる。
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